続 ページ5
話を聞くともう少しで討伐依頼を受けた場所に着くらしい。ここは道が狭く、両側が崖になっているため、万が一のとき逃げるのに時間がかかりそうだ。
「A、気をつけて…」
「うん、勿論だよ」
すると急に炎の矢が飛んでくるのが見えた。
恐らく高台に乗っているヒルチャールが射ったものだろう。
「…っ危ない！」
「うおっ！」
間一髪でAを押し、矢を避けるが、Aの頬に掠る。
「いてっ」
「大丈夫…！？」
「大丈夫、大したことないよ！」
そういうAは頬を擦る。
少し深い傷口だったのだろうか、拭った直後から血が垂れている。
前方に目をやるとやはりそこにはヒルチャールの高台があり、そこから赤いヒルチャールが見えた。
「……オレ、やる」
そう言って高台に向かって全力で走る。
なぜだか分からないがその時、怒りを感じていた。
「ガルァ！」
そう叫び雷狼を呼び出す。
両手剣を振り回し、高台に爪と刃を貫く。
その時の雷音は地面を揺らし、髪の毛は逆立ち、鳥やリスたちも怯え、Aから見ても本物の狼のようだった。
「…いやあ、あの勢いで全部魔物倒しちゃったね」
「…ごめん、少し、抑えれなかった」
「いやいや、こっちとしては助かったよ」
あの後、レザーは高台にいたヒルチャール諸共、近場にいた討伐対象全て巻き込んで倒してしまった。
「ケガ、大丈夫…？」
そう言って心配そうに顔を覗くレザー。さっきまで魔物を一網打尽にしていた人物とは思えない。
「うん、ちょっと痛いけど大丈夫だと思うよ」
「……こっち、向いて」
そう言われ素直にレザーの方を向くと、手で傷口を擦られた。
「えっ！？レザー、血！付いちゃうよ！」
「大丈夫、オレは狼。血、慣れてる」
「そういう問題じゃ……」
そう慌てていると傷口の痛みがすっと消えたことに気がつく。
「薬草、傷口に塗った」
「そ、そういうことだったんだ…ありがとうレザー」
そうお礼を言うと、
レザーはAの頬に手を当て、指でなぞる。
「A。オレの、ともだち、Aはルピカ」
そう呟いて微笑むレザー。
「ひょえっ…」
その時のAは嬉し恥ずかしさで顔を少し赤らめていた。
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作者名：たろ | 作成日時：2022年9月22日 20時
