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phase4 ページ5

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「 心因性発声障害? 」

「 五年前からよ 」

「 !! 」×3



“ 五年前”のあの嵐

全ての人々に深い傷を負わせた厄災



「 あの子、Aは姉夫婦の一人娘なの

  今となっては私のたった一人の肉親 」



Aと呼ばれた桜色の少女

ルプスとベイリーの視線と意識は少女と傍らにいる金色の獅子に向けられ、

必然的にキサラギがマダムの聞き役に回った



「 たった一人とおっしゃるのは、まさか? 」

「 ええ、あの嵐で二人は亡くなり、Aだけが生き残ったの 」



マダムの話では、親子でシェルターに避難しようとした際、夫妻だけ嵐に吹き飛ばされという



「 でもね、Aもシェルターにはたどり着くことは出来なかったの

  なのに生き残った。 ただの偶然?

  運が良かったなんて言葉では片づけられないでしょ 」

「 …これは私の推測ですが、あの金色の獅子ですか? 」

「 私が探しあてたとき、あの子はバケシシの脇腹にうずくまっていたわ

  己の身を盾にして護ってくれたのね

  その時すでにAの声は失われていた 」



目の前で両親が消え、豪風・轟音にさらされ続けた

嵐が過ぎ去る間、

叫んだのだろうか?

泣いたのだろうか?

諦めたのだろうか?

幼い心では処理できなかったのだろう

死と隣り合わせの中唯一護ってくれたのが金色の獅子



「 でも彼は実体ではありませんよんね? 」

「 そうね、最初は私も驚いたわ。Aがバケシシにとり憑かれたって

  一応お祓いなんかしたけどね、なかなか手強くて…

  もう同居人ならぬ同居獣よ! 」



追い払えないと悟ったマダム

彼女が凄いのはここからで、ならばと姪であるAのお世話係に獅子を任命

しかもAの就寝後は



「 私の晩酌につきあってもらってるわ 」

「 え? ば、ばんしゃく? 」



…ですか? 数拍おいてとってつけた語尾

キサラギの動揺がうかがえる



「 ボトル何本も開けるわよ。 ビーフジャーキーをお供にね 」

「 はぁ… 」



もう、どう会話を広げていいのかわからないキサラギ

少し離れた場所で、ベイリーがマカロンを獅子に投げつけ遊んでる

嫌がることなくマカロンを尾ではたき口に放りこむ獅子

それを見て喜ぶA

二人と一匹を複雑そうに見つめるルプス

戯れに参加するでもなく、ただ見守るかのように





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作者名:姫保 | 作成日時:2021年7月29日 10時

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