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phase30 ページ31

*





―――Aさん―――



弾かれたようにAが顔を上げた

あたかも、その声しか届かないかのように



「ブラックダイアモンドに触れて、懐かしくなりましたか?」



亡き母との思い出を…

泣きじゃくる姿を見てルプスは思う

マダムはブラックダイアモンドを取り戻したことを、Aに隠していたのではないかと

IUSで受けた心の傷が癒えるまで

声を取り戻し、過去を乗り越えられるまで

ただ

金色の獅子はそれを待てずに、バビロニウム創造に乗り出した



「俺は貴女を迎えに来ました

 とっととこの獅子ぶっ飛ばして、一緒に帰りたいと思ってます」

「っ!!」

「この獅子はもう、貴女の守護獣なんかじゃない

 貴女の気持ちも考えずにここに連れてきた

 俺はそれが許せません 」



そう言い放ち、金色の獅子が咥えている鳥籠に手をかけた



「彼女を渡せ

 そして答えろ、どうしたら元の姿にAさんは戻る?」



鳥籠を間に挟み睨みあう狼と獅子

対峙すること数拍

金色の獅子がルプスから距離をとるように後ろへ飛んだ



「は?」



飛躍は一瞬

ルプスの手には鳥籠が離れる感覚さえ残らなかった



決スルガヨイ



「うっ?」

「くっ!」



再び心話がルプスとシャーロックの脳内に響く



異能尽キルマデ



「なんだと?」



互イノ望ミデアロウ?



件のホテルでの戦いのことだろうか

本当の意味で勝敗が決まらなかったルプスとシャーロック



「金ちゃんは僕たちが戦えば、マキナたちを解放してくれるのかな?」

「まず俺が戦うのは獅子だ。お前じゃない」

「これは避けられない事象だよ、ルプス」

「なんだと?」



ポンッとルプスの肩を叩き、シャーロックは金色の獅子の前に進む

そして、咥えられた鳥籠の高さまで屈んで、中にいるマキナに話しかけた
 


「マキナ、全て(・・)が終わるまでルプスの姫君を頼めるかい?」



シャーロックの言葉でマキナは悟った

これから目を覆いたくなる場面が繰り広げられるということを

だからとびきりの笑顔で答える



「任せて、シャーロック!」

「さすが、勇ましいね。僕の助手は」



戦わなければ先に進めない



「さあ、始めようか」

「…ああ」

「姫君の前で戦うのは気がひける?」

「んな、ハンパな気持ちでお前に立ち向かえるか!」



ルプスが躊躇なく構える



「僕たちはバビロニウムの手のひらで転がされてるんだよ」




*

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作者名:姫保 | 作成日時:2021年7月29日 10時

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