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phase29 ページ30

*


 


焔のよう立ち昇り、瞬と消える

それらを数回繰り返したのち、金の光は見覚えのある姿になった



「あの二人は?」×2



問いが重なったシャーロックとルプス

問われた対象、金の獅子は微動だにせず二人を見つめている



「単身で来たのか」



ルプスは躊躇うことなく近付く

それにシャーロックも続いた

()(いざな)えとばかりに



コヨ※来い



「くっ!」×2



脳の奥

抑揚の無い古語が刺さる

金の獅子による心話だ



「まるで王者のような振る舞いだね、金ちゃん」

「お前は、こんな場面でも軽口か」

「どんな状況でもリラックスは大事だよ、ルプス」

「抜かせ」



突如、全身の圧覚が始まる

ルプスは二度目の

シャーロックは初めての

崩れ落ちそうな身体に力を入れながら、ルプスはほくそ笑んだ



連れて行け



そう、Aの元へと

チラリと横のシャーロックに視線を動かす

…同じだった

口元に笑みをたたえている

それは、成り行きを楽しんでいるのか、マキナの元へ行ける喜びなのか

きっと後者

ルプスはそう感じた



「フッ」



互いの様を鼻で笑ったのち、視界から景色が失せた




*




圧覚が消え、視界に色が戻る

現われたのは石造りの円形闘技場

その中心に二人はいた



「古代ローマのコロッセウムのようだね」



辺りを見渡しながらシャーロックが言う

言葉通り、所々朽ちて石が崩れている



「おい、あれを見ろ!」



ルプスが指さす先

そこには巨大な石像があった

王冠戴くその姿はこの地の支配者のようだ



「似てるな」

「そうだね」



ルプスとシャーロックは傍らにいた金色の獅子を見た

石像は獅子を模していて、鋭く大きな瞳が相似しているのだ

そんな二人の視線を無視してトンと飛び立つ

石像に向かって

身を翻し、すぐ戻ってきたと思ったら鳥籠を加えていた



「シャ‥ック?」

「え?マキナ?」



鳥籠の中から聞こえたのマキナの声だった

人形のように小さくなったマキナが鳥籠に閉じ込められている

そしてもう一人



「Aさん!」



ルプスが籠の中を覗きこむ

マキナに肩を抱かれ、泪するAがいた

ブラックダイアモンドを握りしめて



「無事で良かった」

「ずっと泣いてるの。ナニ聞いても首を振るだけで」



Aの泪は恐怖心からではない

亡き母への思慕

そう考えたルプスは、



「Aさん」



極上の声音で呼びかけるのだった





*

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作者名:姫保 | 作成日時:2021年7月29日 10時

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