守護狼～GUARDIAN～ (ページ29)

今日:8 hit、昨日:12 hit、合計:71,596 hit

phase28 ページ29

*

キンダンノチ、バビロニウム

カノカギヲヒラクハ、クロキイシ

「何ブツブツ･･･、クロキイシ？それはブラックダイアモンドのことか？」

古書の件りを諳(そら)んじたのはシャーロック

その様子に忌々しく問うたのはルプス

相容れない者同志が二人きりで座す地下室

金の獅子の招きを受けるために

なぜこの場所なのか

唯一、ルプス、シャーロック、A、金の獅子が目見えた場所だったからだ

「恐らくね

　この世界の真実を知るには重要なんだ、ブラックダイアモンドは」

「お前が読んだ古書には彼女たちの記述はあったのか？」

ルプスは世界の真実よりもAへの手がかりのほうが大切だった

「ない、空白のページが多かった。全て埋まればあるのかも知れないけど」

「っ、そうか」

ため息まじりの落胆した声

一人の少女だけを想うルプスの姿は、恋する一人の青年だった

「ねえ、歌ってくれない？」

「は？」

「聞こえたんだ、君の歌が」

過去からね

そう微笑みながら言うシャーロックにルプスは驚くしかなかった

なぜ知っているのだろう

自身とAしか知らない時を超えた世界での出来事を

「彼女を包み込むような声だった
　
　あの曲、歌詞の意味を知ってて歌ったでしょう？」

「言うな！
　
　Aさんは気づいてない。この感情は俺個人の問題だ」

「君個人の問題じゃないよ、僕にも関係がある

　僕たちはすでに金ちゃんの歯車だ、彼女たちに出会った瞬間から

　いや、違うな。五年前のIUS発生の瞬間からだ」

「!!」

「君と僕は共鳴する、ここに流れてこなかった？
　
　仲間とマキナの話をしていた時の、僕の感情が」

左胸に拳をあててルプスに同意を求めるシャーロック

あのとき感じた二重の喪失感の正体を今知る

「ここからは僕の仮説だ

　信じるかどうかは君次第だけどね」

彼女たちは新しい世界の礎になるため選ばれた

そして僕たちは彼女たちを護るために異能を与えられた、そう思わないかい?

バビロニウムの意味?

バビロンは神の門を意味し、ニウムは元素記号の語尾に多い

二つ掛け合わされた造語だと解釈すると、世界創造の元ってことになるんじゃないかな?

絵空事？

夢物語？

電脳社会にそぐわない神話が繰り広げられた

「そうだろう？金ちゃん」

「えっ？」

部屋の端、揺らめく金の光

*