phase13 ページ14
*
ピコン
――― へんですか？ ―――
――― おばさまが ―――
――― そうよぶのでわたしも ―――
「…うつった、んですか？」
ピコン
――― はい ―――
「 プッ 」
こらえきれずに吹き出したルプス
その様子を見て、黒目がちの瞳をパチパチさせるA
何がそんなに可笑しいのか理解できないようで
「 仕草だけでなく、言葉選びも可愛らしいんですね 」
憑きモノの獅子にさえ“ さん”付けで
本当の声で聞けないことが残念でならない
ルプスの言葉に顔を真っ赤にして目を伏せてしまう
そんな恥じらうさまも好ましく感じていた
数秒後
ピコン
―――るぷすさん―――
桜色の言葉が再び浮かびだす
「はい？」
ピコン
―――おいやじゃないですか？―――
「え？」
ピコン
―――もじばんでのかいわ―――
―――てまがかかります―――
―――じかんがかかります―――
「…貴女は誰かにそう言われてきたのですか？」
ルプスの言葉にうなずきもせず、指も動かさなかったA
彼女は富裕層の令嬢で、いろいろな人間にかしずかれてきたはず
しかも叔母があのマダムなのだ
Aをぞんざいに扱う者などいるのだろうか？
そして察する
仕事で忙しいマダムが不在の際には聞きたくもない悪意に曝されていた？
きっと使用人の中にはマダムの前でだけいい顔をする連中がいたのだろう
独りであの広いペントハウスで、金色の獅子だけを頼りに
マダムに心配をかけないよう、訴えることもせずに…
「貴女が優しい人だというのがよく解かりました」
突然、目の前で
そして
重ねようとした白い手を奪うように握りしめて話し出した
「ROWDY SHOGUNのルプスとして誓います」
そう述べたのは用心棒としてのプライド
「貴女を全力で護ります
俺の時間は貴女のためにあるんです
だから俺に対して遠慮することはありません 」
【 貴女のことをもっと教えてください 】
【 貴女のことをもっと知りたいんです 】
真摯な眼に見据えられたAは
応えず
零れた泪がひとつぶ
*
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作者名：姫保
| 作成日時：2021年7月29日 10時
