phase17 ページ18
*
「終わりましたよ」
ルプスの言いつけを律儀に守り上着をスッポリ被ってたA
声をかけられて、上着からひょっこり顔を出した
「!!」
「どうしましたか？」
声が出ずとも言葉を失っている状態なのは明らかだ
ルプスの肩越しにAが見たもの
無造作に転がっている男たちだった
それも血まみれの
「!!」
次はルプスが言葉を失った
Aが突然ルプスの腕やら顔を触り始めたからだ
それも心配そうに
それで理解する
「俺はケガしてませんよ」
ホッとしたようにルプスに笑いかける
用心棒のケガの心配をする警護対象者
そんな人間がかつていただろうか？
頬が緩みそうになるのを必死に隠しながらAの手をとった
「連中が目を覚ますと危険です
早くここから移動しましょう」
コクンとうなずき、ルプスの手を握り共に歩き出す
…はずが
ペタンとへたりこんでしまった
「もしかして？」
「…」
緊張が解けて腰が抜けたらしい
ここまで驚きの連続だったのだ
今まで籠の鳥のような暮らしのAにとってはかなりの刺激だったのだろう
真っ赤になって懸命に立ち上がろうとする姿が可愛らしくてたまらない
緩む頬を隠すのをやめたルプスは、
「失礼します」
ひざ裏に腕を入れ、Aを抱え上げた
突然視界が高くなり、体が不安定に揺れたためルプスにしがみつく恰好になった
「俺の首に手を回して
そのほうが安定しますよ」
服をつかんでいた手をゆっくり首に回してきたA
より密着する
ルプスの首に柔らかな髪が触れる
甘い香りが鼻先をくすぐる
らしくない
ルプスは一瞬の思いをそう感じた
まるで腕いっぱいの花束を抱えているようだと
本物の花束なんて持ったこともないのに
そんな洒落た場面に出くわしたこともないのに
*
転がる男たちをまるで石をよけるように歩くルプス
小路から抜け出し大通りを進みながらある場所を目指した
己の土地勘が合っていればこの先には拠点のビルがあるはず
いつ元の世界に戻れるか分からないなら、せめて
何かきっかけが見つかるかもしれないし
「ビンゴ」
見覚えのある廃ビルにたどり着いた
五年前のダレカがいるかと期待したが無人で
なら、当面の生活をどうしようか思案した矢先
ビルの壁に妙なモノが浮かぶ
ノイズ混じりのぼやけた映像から
金の光に縁どられた球体
…肉球？
*
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作者名：姫保
| 作成日時：2021年7月29日 10時
