僕の後輩は鬱陶しい【kwmr】 (ページ3)

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昼食は定食屋でページ3

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「先輩！お昼まだですよね？！」
「行かない」
「まだなにも言ってない！！」

　お昼になると奴がやってくるのは恒例行事だった。

　俺と同じで動画に出て編集にも携わっている彼女は、裏方の人たちよりもこのオフィスに顔を出す頻度が高い。
　単純計算で一週間に最低二回は顔を合わせるんだから、「お昼まだですよね？！」の後に紡がれる言葉なんて簡単に察せる。慣れというのは怖い。本当に。

　その後続けられるであろう「一緒にお昼行きませんか？！？」を先回りしてぶったぎり、俺は背後でちょこまか動き回る立華に無視を決め込む。

　目には目を。歯には歯を。
　話を聞かない奴には話を聞かないのが一番だ。

「先輩先輩、実はここから徒歩五分の所に美味しいうどん屋さんが出来たんですよ！」
「 …… 」
「あ、あと逆方向にはそば屋さんも出来てて！」
「 …… 」
「その裏には昔ながらの定食屋さんもあったんです！！」
「 …… 」
「せんぱーい、皆さんお昼行っちゃいましたよー。私たちもお昼一緒に行きましょーよー」
「 …… 」

　恐らく、俺がこれまでの人生で出会ってきた人間の中で、これほどまでに諦めの悪いやつは伊沢以外にこいつしか知らない。
　俺は無視を決め込んだと分かっている筈なのに、立華は隣のデスクに突っ伏すと、パソコンを見つめる俺の頬をツンツンつついてくる。

　え？今どんな気持ちかって？
　殴りたいよ。心の底から。

「 ……分かった」
「おぉ！」
「コンビニ行ってくる」
「えー！昨日もコンビニだったじゃないですか！」

　体に悪いですよー！と叫ぶ女には見向きもせずせこせこと外出の準備を整える。
　整えると言っても、財布とスマホ、後は顔を隠す為のマスクを着けていくくらいだ。
　無許可で俺に着いてくるこの女も勿論、世間に顔が割れているから、手作りだという布マスクをキチンと装着して隣を歩いていた。

　―――外に出て五分。俺は確かに真っ直ぐコンビニに向かっていた筈だった。
　なのに。

「先輩先輩！このチキン南蛮定食とかめっちゃ良くないですか？！」
「僕はさばの味噌煮で良い」
「じゃあ私も同じのにします！」
「わざわざ揃えてくるのウザい」
「またまた。本当は嬉しいくせに」

　どうして俺はこの女と例の定食屋に来ているんだろう。

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