鉢合わせる先輩 ページ13
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今日も定時まできっちり仕事をやりきり、パタンとノートパソコンを閉じる。
周りはまだ帰る気配は無さそうだが、私は周りに合わせるなんてことはしない。
すぐに荷物を片付けて「 お疲れさまでした！！！ 」と告げると、部屋に居る人たちはにっこりと笑顔を浮かべて「 お疲れ 」と私を見送ってくれた。
―――定時には必ず帰る、というのは、ここに来たときにまず断言していた。
もしも定時に帰れない場合はここでの手伝いは引き受けられません、とも。
今までのバイトは、大抵はそうして面接に落ちてきた。
けれどここは違った。
私のお願いを簡単に聞き入れてくれて、しかも、こんな私を動画にまで出してくれて。
仕事に慣れてきた最近では、定時までしか働けない私に、卒業後もどう？なんて聞いてくれるようになった。
多分、私にとってこれほどまでにぴったりな職場は、他にはないのではないだろうか。
「 あ！！！！ 」
「 うーわ 」
そんなことを考えながら最近良く行くようになったスーパーに赴くと、この前も鉢合わせた先輩と、今日もまた鉢合わせた。
先輩は私を見るなりあからさまな拒絶反応を見せたが、慣れっこの私はお構い無し。
遠慮なくカートを押して先輩の隣に並べば、彼は「 離れろ馬鹿 」と文句を言うだけで、私を追い払ったりはしなかった。
「 先輩は今日カレーですか？奇遇ですね！私もカレーなんですよ！！ 」
「 そうだけど……お前は何日カレーにするつもりなの？ 」
「 え、一日ですけど 」
「 ……金輪際近寄らないで 」
「 なんでですか！！これくらい普通でしょ！！！！ 」
先輩は私のかごに入った食材を見るなり、急に距離を取ってくる。
確かに先輩が買おうとしている量と比べたら遥かに多いが、仕方ないじゃないか。
うちには兄弟……というか、弟妹が合わせて五人居るんだから。
それに育ち盛りが内二人居るからその分一日に食べる量も尋常じゃないし、足らないよりは、余らせる方がいい。
余った食材はシチューにしたり、肉じゃがにすることもできるし。
「 でも、やっぱり食べ過ぎは良くないんですかねぇ……若いときに太ってると痩せにくくなるって言うし 」
「 ……まぁ、別に、それで幸せなら良いんじゃないの 」
「 ……ふふふふ、なんからしくないですね、先輩 」
「 うるさい 」
先輩の言葉は凄い。いつだって、私の悩みを一瞬で吹き飛ばしてしまうから。
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作者名：朝田 | 作成日時：2021年2月26日 0時
