. ページ9
A「あ、もしもし？」
ずっと聞きたかった声が耳元で響く。
その瞬間に与えられる安心感は他の何かでは得られないもの。
俺はもうAでしか満足できない。
A「ごめんごめん、昨日めちゃめちゃ早寝したから返事遅なった」
福本「ううん、ええよ」
別に愛が何だとかを語るつもりはない。
ただ、
ただ伝えたいだけ、なんて。
クサい思考回路に我ながら呆れる。
A「ほんで何？暇なん？」
福本「あーいや…うん、まあ」
曖昧な回答で誤魔化す。
A「んー…でも大晴と会ってもなあ」
ああ、ちょっと。
刺さるって。痛い痛い。
A「することないし」
付き合いが長いからこその台詞。
そう分かっていても苦しい。
A「どっか行きたいとこあんの？」
福本「や…逆にどっかある？」
A「んー…特に」
必ずしも恋愛が幸せだとは限らない。
少なくとも今の状況を心の底から幸せとは呼べない。
勿論恵まれていることは分かってる。
同じグループに配属されたお陰で仕事中に限っては気持ちも理由も関係なく会いたい放題やし。
―でもそこに愛がなかったら何の意味もないんちゃう？
A「とりあえず今から出かけるし、また連絡するわあ」
福本「あ、そうなん？どこ行くん？」
A「斗亜とこじけんとご飯行く〜」
俺も誘ってくれたらええやん、なんて。
福本「…ならまた連絡して、」
A「ん、またね〜」
いつ誘われてもおかしくないと予定を空けていた健気な自分をとことん甘やかしてやりたくなった。
通話終了の画面を眺めながらソファに沈んでいく。
センチメンタルに耐えられそうになくて目を閉じる。
だけど瞼の裏でAの笑顔が浮かんできてすぐに開いた。
恐らくAは俺の気持ちに気付いているはず。
だけど常にどっちつかずで煮え切らない彼女が結局どうしたいのかは分からない。
そのせいで"もしかしたら"なんて期待を抱かされてはどん底に落ちることを繰り返している。
もし―
もし俺の愛を伝えたとしたら何か変わるんかな。
窓際で散った花びらに触れた。
棘があっても棘ごと愛す覚悟はできている。
でもAは俺に愛される気あるんかな―
日が沈む頃には会えると信じて花瓶を手に取り、
憂いとジレンマを水に溶かしてシンクに捨てた。
Fin
愛を伝えたいだとか/あいみょん
壊れそうな片思い(S.S)→←枯れない愛に覚悟を添えて(F.T)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 218人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» こちらこそ最後までお付き合い頂き、ありがとうございました！またいつか短編集を作りたいと思っているので、是非お楽しみにしていてください☺️ (2023年3月16日 22時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - この作品すごく好きなので終わってしまうのは悲しいですが今まで本当に有難う御座いました🥺💓短編集が好きなのでまた作って欲しいなとか思ってます😂主様の作品全部好きなのでまだまだ楽しみにしてます(> <)今までお疲れ様でした😌 (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます！とても嬉しいです😌これからも是非楽しんでください！ (2023年3月5日 17時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 主様の作品毎日めっちゃ楽しみにしてます🥺✊🏻いつも胸がキュッとなる物語ばかりで読んでてすごく楽しいです(＞＜) (2023年3月5日 16時) (レス) id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年2月7日 21時
