君と見る三日月(M.Y) ページ47
もう泣いたりなんかしない。
強くなるって決めたから。
A「...はい」
耳元に宛てがったスマホから大好きな声が聞こえる。
正門「もしもし？...今電話大丈夫？」
A「うん...大丈夫」
良規くんと付き合い始めたのは5年も前のこと。
私達が今よりずっと若かった時の話。
正門「明後日やっとそっち帰れるみたいなんよ」
A「...そうなんや」
この5年間で彼を取り巻く環境は大きく変化した。
それはアイドルとしての人生を歩む彼にとって確かな進歩。
勿論私にとっても喜ばしい出来事ばかりが起こっている。
正門「会える？」
A「うん、仕事終わりなら」
6人組グループのセンターを担う良規くんはソロコンサートや主演舞台等、劇的な活躍を見せている。
まだまだ売れていなかったあの頃とは大違い。
正門「ならお仕事終わったら連絡して？」
A「...うん」
今では次のデビュー候補。
どれだけ冷静に考えたって未だに信じられない。
だけど夢物語じゃない。
列記とした現実。
正門「晩ご飯、食べたいもん考えといて」
A「どっか食べに行くん？」
正門「うん、たまには外食もええかなあって」
私達はずっと一緒にいた。
だけどこれからは違う。
足並みを揃えて歩いてきた一本道は二手に別れてしまう。
別々の方向へと進む時が来てしまったのだ。
デビューが決まるということは全国区での活動が増えるということ。
必然的に大阪から東京へと拠点を移さなければならない。
それはつまり私との別れを意味する。
ふと窓を開けてベランダに出た。
今にも泣き出しそうな空に三日月が光っている。
A「...晩ご飯は家にしよ」
正門「えっ？」
A「私作るし」
正門「そう？たまには外で...」
A「ううん、私作りたいから」
消えてしまいそうな光が揺れる。
寂しさと儚さが胸から溢れ出しそうになる。
私自身は大阪を離れられない。
良規くんについて行くことはできない。
昔から抱いてきた家業を継ぐ夢を叶えたいから。
正門「A？」
A「ん？」
正門「...好きやで」
嗚呼―
泣かないって決めたのに。
強くなるって決めたのに。
弱かった私とは決別したはずなのに。
ゆっくりと頬を涙が伝った。
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ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» こちらこそ最後までお付き合い頂き、ありがとうございました！またいつか短編集を作りたいと思っているので、是非お楽しみにしていてください☺️ (2023年3月16日 22時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - この作品すごく好きなので終わってしまうのは悲しいですが今まで本当に有難う御座いました🥺💓短編集が好きなのでまた作って欲しいなとか思ってます😂主様の作品全部好きなのでまだまだ楽しみにしてます(> <)今までお疲れ様でした😌 (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます！とても嬉しいです😌これからも是非楽しんでください！ (2023年3月5日 17時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 主様の作品毎日めっちゃ楽しみにしてます🥺✊🏻いつも胸がキュッとなる物語ばかりで読んでてすごく楽しいです(＞＜) (2023年3月5日 16時) (レス) id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年2月7日 21時
