いつかまた会う日まで(S.M) ページ33
通い慣れた学び舎を見上げる。
決して綺麗とは言い難い古びた風貌を無性に切なく思った。
A「佐野！」
昇降口から駆け寄ってくるセーラー服姿を見られるのもあと数回。
楽しかった高校生活は間もなく終わりを迎えてしまう。
A「帰ろ」
美しいオレンジがその柔らかな頬を染める。
瞬きと共に睫毛の影が数回動いた。
佐野「…うん。」
3年間はあっという間だった。
勿論それなりに辛いことも経験したけれど、約18年間生きてきた中で1番充実していた。
A「明日から卒業式まで休みかあ」
佐野「そやなあ」
卒業したらこうして2人で帰ることは愚か、きっと会うこともなくなってしまう。
4月から俺は音大へ、Aは東京の専門学校へと別々の道を歩んでいくことが決まっているから。
A「佐野は何するん？」
佐野「んー…何しよ」
帰る方向が同じだという理由で一緒に下校することが増えたけど、俺らはただのクラスメイトに過ぎない。
心の内に秘めた思いは伝えられないまま"青春"なんて言葉で括られて忘れ去られていく。
A「私は引越しの準備とかあるもんなあ」
夕日が揺れて、2人の影も揺れて。
小さな方に背負い込んだ俺らの未来も同じように揺れているのだろうか。
佐野「1人で東京、怖くないん？」
A「うーん…あんま怖いとかは思わんけど」
佐野「知り合いとか誰もおらんの心細いやん」
A「まあ…」
今更こんなことを口走ったってAの進路が変わるわけでもないけれど、幼稚な俺は僅かな抵抗をやめられなかった。
A「でもまあ、頑張るって決めたし」
Aには将来の夢がある。
それを叶える為に上京していく。
その志を応援したい気持ちは山々なのに、自分勝手な寂しさが上回ってしまう。
A「あっ、」
雫が頬で跳ね返った。
空を見上げた途端、天気雨がイタズラに降り注いでオレンジの粒が街に輝き始めた。
A「走ろ、」
前髪を抑えながら走り出した彼女の背中を追う。
A「バス停まで！」
キラキラと美しい雨粒が舞って、
スニーカーがアスファルトを強く蹴って、
柔らかくも強い太陽の光に目を細めて、
振り返ったAが1番の笑顔を見せた。
A「佐野、はよ走って！遅いって！」
―ああ、好きやなあ。
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ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» こちらこそ最後までお付き合い頂き、ありがとうございました！またいつか短編集を作りたいと思っているので、是非お楽しみにしていてください☺️ (2023年3月16日 22時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - この作品すごく好きなので終わってしまうのは悲しいですが今まで本当に有難う御座いました🥺💓短編集が好きなのでまた作って欲しいなとか思ってます😂主様の作品全部好きなのでまだまだ楽しみにしてます(> <)今までお疲れ様でした😌 (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます！とても嬉しいです😌これからも是非楽しんでください！ (2023年3月5日 17時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 主様の作品毎日めっちゃ楽しみにしてます🥺✊🏻いつも胸がキュッとなる物語ばかりで読んでてすごく楽しいです(＞＜) (2023年3月5日 16時) (レス) id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年2月7日 21時
