夢に溺れる君との時間(M.Y) ページ28
波音が耳を擽る海辺のカフェ。
窓から入ってくる風はひんやりと冷たい。
店員「お待たせしました」
冬が終わって春を迎えようとしているこの頃、店内の客足は疎ら。
だからこそ寒い季節に2人で会う時はこのお店を選ぶことが多い。
正門「ありがとうございます」
小さく会釈をしながら店員さんにお礼を述べた彼と目が合う。
正門「ん？」
A「…ううん、何もない」
寂しい。
虚しい。
苦しい。
でも、それと同じくらいに愛おしい。
大好きな人が目の前にいるとは思えないほど沈んでいく心。
共有する時間も思い出も全て消し去りたくなる。
正門「やっぱハンバーグにしたら良かったかなあ…」
A「1口食べる？」
正門「あ、ほんまぁ？」
よしくんのエビフライと私のハンバーグ。
1口ずつトレードして、"どっちも美味しい"なんて言って笑って。
傍から見た私達はきっと何の変哲もない恋人同士。
だけど実際はそうじゃない。
A「…食べ終わったらどうする？」
正門「んー…」
この関係が始まってから2年ほど経つ。
だけどずっと変わっていない。
何度季節が次のページへとめくれていったって、彼の左手の薬指は変わらないまま。
輝く指輪の存在を変えられないまま。
正門「…うち来る？」
A「えっ？」
正門「…今日帰って来おへんから」
A「あ…そうなん？」
―奥さん、どんな人なんやろ。
ぼんやりとそんなことを考えながら運転が苦手な彼の代わりにハンドルを握る。
誘われるがままに家へ向かう私は最低な女。
家庭があると分かっていながら2年間も拒めずにいる弱い女。
だけど時々考えてしまう。
もし奥さんがいなかったら、
もしもよしくんが結婚するより先に私と出会っていたら―
正門「あ、ここ右」
A「うん、」
私のものになっていたのだろうか。
A「お邪魔しまーす…」
正門「はーい」
玄関に飾られたドライフラワーを目にした瞬間、心臓の辺りがぎゅっと締め付けられた。
正門「適当にその辺座ってええよ、」
A「うん、ありがとう」
ソファに置かれた可愛らしいクッションが目頭を熱くさせる。
正門「コーヒー飲む？」
A「うん…」
―ああ、何してんねやろ。
ふと我に返って自分を嫌いになった。
よしくんの手のひらで踊らされるだけの日々。
もうとっくに踊り疲れているのに、それでもまだ関係は続いていく。
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ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» こちらこそ最後までお付き合い頂き、ありがとうございました！またいつか短編集を作りたいと思っているので、是非お楽しみにしていてください☺️ (2023年3月16日 22時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - この作品すごく好きなので終わってしまうのは悲しいですが今まで本当に有難う御座いました🥺💓短編集が好きなのでまた作って欲しいなとか思ってます😂主様の作品全部好きなのでまだまだ楽しみにしてます(> <)今までお疲れ様でした😌 (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます！とても嬉しいです😌これからも是非楽しんでください！ (2023年3月5日 17時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 主様の作品毎日めっちゃ楽しみにしてます🥺✊🏻いつも胸がキュッとなる物語ばかりで読んでてすごく楽しいです(＞＜) (2023年3月5日 16時) (レス) id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年2月7日 21時
