本物になりたい偽物の俺(K.K) ページ21
A「あ、来た」
小島「そらまあ…来るやろ、」
そっちが呼んだんやから、な。
当たり前に来るやろ、そんなん。
夜中1時。
すっかり見慣れてしまったホテルの部屋。
右の口角を上げた彼女のリップが光る。
A「シャワー浴びる？」
ぷかぷかと漂う煙が目に染みた。
薄紅色のネイルが施された指で挟んだ筒上のそれに視線をやる。
吸い始めたのは元カレの影響とか何とか言ってたような。
小島「…家で風呂入ってきた」
体の中には触れられるけど、
心の中に触れることはできない。
届きそうで届かなくて、もどかしいまま放出される。
A「健くんさ、ちょっと痩せた？」
小島「んー…」
Aの1番になることはできない。
体の中に入ることでしか"俺"という存在を残せない。
A「もーちょい筋肉ある方が好きやけど、な」
小島「…ふーん、」
生ぬるい返事。
生暖かい部屋。
生のままの、それ。
Aには好きな人がいる。
それは俺じゃない。
だから俺がここに来る意味なんてない。
分かってる、分かってるけど―
A「健くん、」
小島「…ん？」
A「好きな人できたら"できた"って言うてな、」
分かっていてもやめられないのは、
理解していても離れられないのは、
いつかAの好きな人になれるのではないか、という希望を捨て切れないから。
アホよなあ、俺。
分かってはおるけど、それでもやっぱり変われへん。
小島「…ん、言うわ」
電子レンジで温めたみたいなキス。
まるで偽物みたいな味がした。
―明け方、いつも通りAは黙って出ていった。
後から目を覚ました俺は煙草の残り香に思いを馳せる。
例え偽物であれど、傍にいさせてほしい。
Aが俺を選んでくれるのであればどんな形でも良い。
でも、もしいつか本物になれるのであれば―
小島「…なれるわけないよなあ、」
その言葉は静かな部屋に響いて弾けて、
1人で食べる朝食に底知れない虚しさを感じさせた。
好きな人に届かないAに届かない俺。
代理品として簡易的に食されるだけの俺。
Aにとっての俺はまるでレトルト食品。
お手軽な男。レトルトの彼。
偽物の存在。誰かの代わり。
それでも結局好きなものは好きだから、
俺はまた何度もAに食べ尽くされる。
Fin
レトルトの彼/ウソツキ
暗くてぬるい、そして甘い(M.Y)→←淡い色のプルオーバー(S.M)
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ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» こちらこそ最後までお付き合い頂き、ありがとうございました！またいつか短編集を作りたいと思っているので、是非お楽しみにしていてください☺️ (2023年3月16日 22時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - この作品すごく好きなので終わってしまうのは悲しいですが今まで本当に有難う御座いました🥺💓短編集が好きなのでまた作って欲しいなとか思ってます😂主様の作品全部好きなのでまだまだ楽しみにしてます(> <)今までお疲れ様でした😌 (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます！とても嬉しいです😌これからも是非楽しんでください！ (2023年3月5日 17時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 主様の作品毎日めっちゃ楽しみにしてます🥺✊🏻いつも胸がキュッとなる物語ばかりで読んでてすごく楽しいです(＞＜) (2023年3月5日 16時) (レス) id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年2月7日 21時
