淡い色のプルオーバー(S.M) ページ20
冷たい風が頬を撫でる帰り道。
自販機で買ったホットココアを両手に持つAちゃんが寂しげな笑みを浮かべた。
A「…振られたんよ、」
熱そうに1口啜って、少し顔を歪めて。
赤くなった鼻を擦って、また更に赤くなって。
佐野「振られたって…えっ？」
返事を催促するかのように聞き返す。
A「"好きな人できた"って振られちゃった、」
手を隠す袖口、俯いて目を隠す前髪。
舞った白い息と伸びた目尻がやけに悲しい。
細めた目の先に何が見えているのか俺には分からない。
A「あ、もう大丈夫やで？十分落ち込み切ったし」
知らんかった。
はよ言ってくれたら良かったのに。
俺ってそんなに頼りないんかな。
A「まあでも一応、報告。」
力にはなれずとも傍で見守ることはできたのに。
佐野「そっ…か。」
Aちゃんを好きになったのは半年ほど前のこと。
その頃には既に彼氏がいて、俺の片思いは片思いでしかないことを悟った。
A「まあ…生きてたら色々あって当たり前よね」
達観したような台詞。
些細な強がりでさえ愛おしい。
A「ごめん、暗い話して」
佐野「ううん…大丈夫」
曲がり角と共に近付くさよならの時間。
このまま世界が止まってしまえば良いとさえ願う。
佐野「Aちゃん？」
A「ん？」
佐野「…これ、」
リュックのポケットから取り出した新喜劇のチケット。
さっきコンビニで発券してきたばかりのもの。
佐野「今度…」
鼓動が高鳴る。
"一緒に行こう"だとか言えたら良かった、けど。
佐野「今度友達とでも、」
A「え？」
佐野「…友達とでも行って気分転換してきたら？」
恥ずかしくて目を逸らした自分が情けない。
でも、少しでもAちゃんが元気を出してくれるなら。
A「ふふ、ありがと」
笑ってくれただけ幸せ、か。
チケットを手渡す瞬間、触れそうで触れなかった指先が離れていく。
それがいやに悲しくて誤魔化すように鼻を啜った。
A「じゃあ…またね」
佐野「うん、また。」
曲がり角でさよなら。
淡い色のプルオーバーが遠ざかっていく。
その小さな背中に手を振って、またここで会えることを祈って。
佐野「"また"っていつなんやろ…」
あの瞬間に指先が触れていたら何か違ったかも、
なんてAちゃんには言えないような未来を想像しながら歩き出した。
Fin
プルオーバー/KEYTALK
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ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» こちらこそ最後までお付き合い頂き、ありがとうございました！またいつか短編集を作りたいと思っているので、是非お楽しみにしていてください☺️ (2023年3月16日 22時) (
レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - この作品すごく好きなので終わってしまうのは悲しいですが今まで本当に有難う御座いました🥺💓短編集が好きなのでまた作って欲しいなとか思ってます😂主様の作品全部好きなのでまだまだ楽しみにしてます(> <)今までお疲れ様でした😌 (2023年3月15日 18時) (レス) @page50 id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
ﾋﾟﾝｷ(プロフ) - ふさん» ありがとうございます！とても嬉しいです😌これからも是非楽しんでください！ (2023年3月5日 17時) (レス) id: 9e28345530 (このIDを非表示/違反報告)
ふ - 主様の作品毎日めっちゃ楽しみにしてます🥺✊🏻いつも胸がキュッとなる物語ばかりで読んでてすごく楽しいです(＞＜) (2023年3月5日 16時) (レス) id: 77b65fcba7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ﾋﾟﾝｷ | 作成日時：2023年2月7日 21時
