第7話 ページ8
獪岳side
朝、目が覚める。
昨日の夜に泣きじゃくったからか瞼が重い。
身体を起こすと外はもう明るくなっていた。
寝坊してしまったと思い立ち上がろうとすると、奥の襖がそろりと開き、そこから可愛らしい顔が覗き込んだ。
女中のさよだ。
さよは俺の顔を見るなりパァーっと明るい顔になり、俺の首に飛びついてきた。
「獪岳にいさま、獪岳にいさま、おはようございます！早く来てください！今日は特別にいいものが見られますよ！」
いつもは控えめなさよが珍しく興奮しているので、何かと思い服も着替えないままさよに引っ張られるがまま走った。
「チッ、引っ張んな！確かに寝坊したのは悪かったけど……そいやぁお前割烹着は……って」
俺が引っ張って連れていかれた先には厨房。
米のたける匂い。
魚の焼ける匂い。
味噌汁の煮える匂い。
そしてそこには、師範。
割烹着を着て少し長い髪を結い、朝食の準備をしている。
男でありながらその姿はまるで、
「かあさん」
会ったこともない母を彷彿とさせた。
「おはよう、獪岳、さよ。朝食を頂こう。なに、君たちはいつも頑張っているからね、今日は俺が作ってみた。ささ、2人とも運ぶのを手伝ってくれ。」
さよがきゃあきゃあと騒ぎ始める。箸を出し、自分のお膳を持っていった。
「獪岳も、ほら。自分の分は持っていきなさい。いつも無無理矢理3人で食べているが、君は1人で食べようとするだろう。一緒に食べた方がいい。ご飯はね、みんなで食べた方がおいしいんだ、遠慮はしなくていい。俺たちはもう家族なんだから。」
誰かが、同じようなことを言っていた。また弟弟子の顔が頭に浮かぶ。
でもそうだ。俺は今、先生の家できらいなあいつらと食べているんじゃない。
師範と、さよと、家族で。生きるために食べている。
「はい。師範。」
びっきりの笑顔で返事をする。それに答えるように師範も笑った。
各自席につき手を合わせる。3人で目を合わせ、大きな声で感謝を述べた。
「「「いただきます！」」」
「A様！おいしいです！」
「おいさよ、もっと綺麗に食え。飯が不味くなる。」
「ありがとうさよ。獪岳は凄く綺麗に食べるね、さすがだよ。」
俺は、その時初めて本当の「家族」に出会えたような気がした。
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2021年9月4日 14時) (
レス) id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 続き楽しみにしてます！！更新頑張ってください！！ (2021年1月11日 22時) (レス) id: e1c8a072d5 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 続きぃ…続きが…読み…た…い…_(:3｣∠)_ (2020年6月25日 2時) (レス) id: a576ecff6a (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ - こういう感じの作品…求めてました…ありがとうございます！ (2020年5月8日 13時) (レス) id: f998f40160 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがり - 尊い・・・尊い・・・素晴らしい。。もう何度読んだか・・続きたのしみにしています！ (2020年4月18日 12時) (レス) id: 43beb87d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐藤 | 作成日時：2020年2月11日 13時
