第6話 ページ7
「獪岳、ひとついいことを教えてあげよう。」
獪岳の頬を伝う涙を拭ってやり、1つ息をつく。
獪岳は早く言えと言わんばかりの顔をしている。
「俺も霹靂一閃ができない。」
沈黙。
しばらくすると獪岳は心底驚いたように口をパクパクとさせた。
「なっ……そんなこと……！あるわけないじゃないですか……！！からかわないでください。」
「いやいや、本当なんだなそれが。しかも俺は左利きを右利きに矯正した。雷の呼吸を習得する時に。獪岳、君だってそうだろう。左利き。無理して右になおしただろう。」
ほっぺをぎゅーと摘む。
思ったより柔らかいほっぺはかなり伸びた。
「いゃんでほれを……？(なんでそれを……？)」
「はは、長年雷の呼吸に未練があってね、研究をしていた。どうしたらできるようになるのか。でも分かったんだ。右足に重心をかけて踏み込む霹靂一閃は、左利きには難しい。骨格的に、どうしても踏ん張りが足りなくなってしまうんだ。」
またもや獪岳は驚いた顔をしている。と同時に少し悲しそうな顔になった。
無理もない。いつかできると思って練習していた型が、自分には出来ないかもしれないと分かったのだから。
この10日間だって、獪岳は1日たりとも霹靂一閃の練習を欠かさなかった。
それだけ壱の型が出来ないことが悔しくて、向上心もあったということだ。
こんな子が自分の継子であることに嬉しさが溢れてきた。
「獪岳、新しい型をつくろう！君と俺しかできない舞の呼吸の新しい型。霹靂一閃に相当する凄い型を作ってしまおう。それで、十分だと思うんだ。」
つまんでいた獪岳の頬を元に戻す。彼は筋が良い。すぐに舞の呼吸だって習得する。
ならば霹靂一閃に負けないほどの一閃ができるはずなのだ。
踏み込む足を変え、刀を背負う獪岳用に構えを変える。
今ここで考えられるだけで希望が産まれてくる。
獪岳も、俺の言葉にどこか嬉しそうにしていた。
「よし、明日からは俺も早起きするぞ……！掃除も料理もしよう。まずは初心に帰ることが大切だからね。俺はさよを寝かして来るとするよ、獪岳ももう眠りなさい。明日からは忙しいからね。」
さよを抱き抱えて立ち上がる。獪岳も釣られるように立ち上がった。
そして深深と礼をした。
「おやすみなさい。師範。」
といった。俺も振り返り
「おやすみなさい。獪岳。」
そう言って、各自部屋に帰った。
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廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2021年9月4日 14時) (
レス) id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 続き楽しみにしてます！！更新頑張ってください！！ (2021年1月11日 22時) (レス) id: e1c8a072d5 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 続きぃ…続きが…読み…た…い…_(:3｣∠)_ (2020年6月25日 2時) (レス) id: a576ecff6a (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ - こういう感じの作品…求めてました…ありがとうございます！ (2020年5月8日 13時) (レス) id: f998f40160 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがり - 尊い・・・尊い・・・素晴らしい。。もう何度読んだか・・続きたのしみにしています！ (2020年4月18日 12時) (レス) id: 43beb87d30 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：佐藤 | 作成日時：2020年2月11日 13時
