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第5話 ページ6

「どうして君は鳴柱の継承権を放棄したのかな。君ほどの実力があるのなら鳴柱になることは夢でもなかっただろうに。」



俺は獪岳の頭を撫でながら尋ねた。



泣いている子にこんな事を聞くのは酷だとは思うが、これは知っておきたかった。



俺はどうしてでもその理由だけは知りたかった。



獪岳は、ゆっくりではあるが答えてくれた。



「俺は、霹靂一閃が出来ません。霹靂一閃以外は出来るんです。でも、どんなに頑張っても出来なかったんです。その事で、俺も師範も悩んでいたんです。



そんな時に、弟弟子がやってきた。あいつは、俺がどんなに練習をしても、ものが握れなくなるほど手が血だらけになるまで刀を握っても出来なかった壱の型だけが出来たんです。



俺の方が頑張っているのに、俺の方が凄くて、俺の方が……俺は特別が良かったのに……それなのに……。



どうせ、どうせ師範だってすぐ俺のことなんてどうでも良くなるんです。」



泣きじゃくる獪岳。



後半はただの八つ当たりのようだったが、彼はこの思いを、1人で抱えてきたのだ。



たった1人で。



恐らく獪岳は幼い頃に、愛情を注いでくれる人がいなかったのだろう。



獪岳は自分が1番が良かった。でも桑島さんは優しいから2人を平等にあつかったのだろう。



それが獪岳にとっては気に食わなかった。



桑島さんは正しい評価をしていたかもしれない。



でも獪岳は自分だけを認めて欲しかった。



幼子のようなわがまま。



でも恐らくそのわがままを、幼子であった頃に誰にも聞いて貰えなかったのだ。



だから、仕方の無いことなのだ。



「獪岳、それは違う。俺は君を見捨てたりなんてしないさ。だって君は優秀だ。積極的に働き、積極的に学ぶ。さよとだって兄妹のように関わってくれる。俺はね、獪岳が数ある型のうちどれかが出来なくても、どこか心に弱いものを持っていても、それでもいいと思っているんだ。」



「でも。」



獪岳はまだ何か言いたげだったがそれっきり口を開かなくなった。



わかる。獪岳の気持ちはよくわかる。



俺だって頑張った。凄く頑張った。でも雷の呼吸を継承するには至らなかった。



だからあの家を出て、舞の呼吸という我流の型に逃げた。



でもその舞の呼吸だって、雷の呼吸がなければ生まれなかった。



君が俺の継子になることもなかった。



だから、




今までの事が無駄だったなんて思わないでくれ。

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廣岡唯 - 面白い続きが観たい… (2021年9月4日 14時) (レス) id: 4e6dbece94 (このIDを非表示/違反報告)
ナギ(プロフ) - 続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2021年1月11日 22時) (レス) id: e1c8a072d5 (このIDを非表示/違反報告)
ノルン(プロフ) - 続きぃ…続きが…読み…た…い…_(:3」∠)_ (2020年6月25日 2時) (レス) id: a576ecff6a (このIDを非表示/違反報告)
ぜろ - こういう感じの作品…求めてました…ありがとうございます! (2020年5月8日 13時) (レス) id: f998f40160 (このIDを非表示/違反報告)
通りすがり - 尊い・・・尊い・・・素晴らしい。。もう何度読んだか・・続きたのしみにしています! (2020年4月18日 12時) (レス) id: 43beb87d30 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:佐藤 | 作成日時:2020年2月11日 13時

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