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ーー「共犯だろ!」
脅迫に思わず背中がフェンスに当たる。落ちていた枝に引っかかり、膝に傷がついた。
いたい。こわい。
トーク画面が映ったスマホが歩道に落ちる。そのブルーライトが夜道をほのかに照らした。肥え、脂ぎった中年の男は唾を撒き散らしながら私に向けて叫ぶ。
「ごめんなさいごめんなさい」
防御しようとした震えた手は空を切り、何もできなかった。縋り付くものもなく、こんな状況になった私を助けてくれる人もいないだろう。
涙で前が見えなくなった。痛みと恐怖で何も考えられなくなる。ただ、謝罪を口に出すしかなかった。
「ごめんなさい秘密にして……」
男が私に手をあげようとした瞬間。
「おじさん何してんの?」
目を瞑った先に、誰かの声が聞こえる。
「これは脅迫と暴行罪かなー? 証拠撮っちゃった」
この嫌いな余裕気な声。楽しそうな笑い声に挑発する台詞。
それに目を瞑っていてもあの人だ、と一瞬で分かった。
彼と男が口論した末、中年の男の方が帰っていったようだ。ゆっくりと目をあけると、顔を覗き込む彼がいた。まだ私の身体は震えていて、冷や汗は一向に引かないままだった。
「援交は秘密の方向でなんとかやってくれるみたいだよ」
「だから……ほら、なんか俺が泣かせてるみたいじゃん」
頬に冷たい手が触れる。涙を拭われた。
「何でおじさん学校に来てたの?」
フラフラと立ち上がりながら土を払う。足に何個か傷ができてしまった。血が出ている。
「……デート断ったら来た」
「そっか、ちょっと休もう」
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作者名:たけしだよ@コイキング | 作成日時:2019年1月29日 21時