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とくに話すこともなく、お昼の休み時間がどんどん減っていく。多少のつまらなさを感じながらも、彼に話しかけてみる。
「朝、言ってたやつ、考えてくれた?」
ぼそりと言うと、うげ、という嫌そうな声が隣から聞こえる。べつに聞いても聞かなくても私には関係ないのだけれど。と、窓からの風で走っている埃を見つめた。なんだか灰色の動物のようにも見える。
「……そんな軽々しく秘密を言うと思う?」
まあ、たしかに。
「いや、やっぱり……特別仲良くしたいわけでもないから言わなくてもいいよ」
干渉するのが面倒くさくなって、足元を見下げる。私は秘密を握られているから彼の秘密も知らないと不公平だ、と知りたがったのだが、今考えると簡単に言ってくれるものでもないな、と思う。それを知るためには、彼に干渉しなければならない。緊張して疲れて、苦労しながら知るのは面倒だ。
「なにそれ、ちょっと寂しいー」
寂しさを微塵も感じない話し方だ。
「ま、チャイムなりそうな時間だし、教室行こっか」
彼はまたはぐらかし、立ち上がる。手を差し出され、一瞬迷うと無理やり手を引かれた。冷たい手だったが、すぐに熱がこもった。
「男の人と手、繋ぐの今日が初めてかも」
その熱にふと思う。親とはあるかもしれないが、家族とは違うこの温もりは初めてだった。なんだか分からない、不思議な気持ちになる。嫌悪……ではない。ホッとする、変な感じ。
「嫌?」
少し考えて、横に首を振った。
「……なんだか心がじわーっとするような」
「なにそれ、面白いね」
「うん、でももういい、離して」
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作者名:たけしだよ@コイキング | 作成日時:2019年1月29日 21時