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ーー「昴さん見ませんでしたか?」
息を整えながら、浅田くんは私に向けて言った。わざわざ探しに図書室まで来たのか。いつもの説教しに。確かに宿題も忘れたり授業中に居眠りなんてしていたら、正義感の強い浅田くんだったら怒るか、と納得する。
見ていない、という返事をすると彼はため息をつく。そしてまた早足で去っていった。
「はー、助かった」
楽しそうな表情で彼は机の下から出てくる。説教から逃げてこの表情、サバイバルゲームか何かと勘違いしているのでは、と呆れた。二分前ほどに、彼は走ってこの図書室まで来て私に助けを求めたのだった。面倒くさい、と思いつつも私は秘密を握られている側なので仕方なく匿った。
「いやぁ、ほんと嫌だね」
「……あの」
少し大きな声で彼は言う。だからなのか……。
「昴さん?」
浅田くんが怖い顔をして図書室の前に立っている。私さえも驚いて小さな悲鳴を上げてしまうほどだった。その瞬間、手を引かれ浅田くんとは反対側のドアから図書室をでていく。彼の足の速さは恐ろしいほど速く、すぐに息を上がってしまう。浅田くんを撒くため、縦横無尽に校舎を駆け回るので集まる人の視線が嫌だった。
もう足がついていかないほどになると追跡も途絶える。階段裏に隠れると、疲労感がどっと出てきた。浅田くんはもっと疲れているだろうな、と心の中で労った。
「できるだけ声出さないでね」
掃除道具が詰まったロッカーがある階段裏は暗くてじめじめしている。そんなところで隣同士くっついていると余計に心が疲れた。彼と一緒だと緊張も解けないし、此処は雑巾の臭いもするし。
「あれ、なんでAさん連れて来たんだっけ」
反射的に引っ張ってきちゃった、てへぺろ。その後に不真面目な謝罪を受けるが無視をしておいた。迷惑にも程がある。なんで巻き込まれなければならなかったのだろう。
「あ、やばい」
すると私の方に近づき隠れるように覆いかぶさられた。右耳に彼の顔がある。軽い吐息とクスりという笑い声が聞こえた。
「緊張するね」
愉快そうな声にぞわぞわと背中に寒気がした。耳元で話されるとなんだかぞくぞくしてしまう。気持ち悪く、不快なぞくぞくだった。
「ふーん、耳弱いんだ?」
「……気持ち悪いからやめて」
彼と距離を話そうとするが後ろは壁だった。なので彼をぐいっと退けさせ、距離を離す。
「えーもうちょっと遊びたいなー」
とにかく、彼は意地悪なことが改めて分かった。
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作者名:たけしだよ@コイキング | 作成日時:2019年1月29日 21時