Der geliebte Mensch auf der Welt ２ (ページ47)

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第三走者の山野達が位置についてスタートすれば、応援席から大きな歓声が響いた。

はっしーも山野も、はっきり言うてイケメン。

運動部特有の足の速さで他者を置き去りにした二人が、お題の紙を手に取って応援席に近づけば、女子達は大興奮な訳で…。

いち早くお題の人物を見つけたはっしーが、相手と手を繋いでゴールテープに一直線。

その後を追う山野がグングン距離を詰めるも、はっしーが先にゴールテープを切った。

スタートラインにつくように指示されて位置つく。

先に走り終わった山野と先輩達が、ゴール付近から何やら叫んでいた。

…とりあえず、無視しよ。

どうせ、１位でゴールしろとかやろうし。

スターターピストルの合図で勢いよく走り出す。

すぐ隣を走るのは……確か、バスケ部の３年生。

ってか、コイツ…さっきA先輩の腕掴んだ奴やん。

なんとなく、コイツには負けるのは嫌で地面を蹴る足に力が入る。

ほぼ同時にお題が書かれた紙を手に取り、中を見れば…

マジか…

こんなん、一人しか思い浮かばへんやん。

その場から動かへん俺を横目に、追いついた他の走者達が次々と応援席へと走って行く。

グラウンドに響くＢＧＭの音も

司会のマイク越しの音も

観客の音も

目線の先の光景に、全ての音が消えた。

今までの俺なら、絶対せえへん。

変に注目されんの好きやないし、

野球以外、必死になる事もあんまりない。

ほんま、

自分でも、らしくないなって思う。

「A先輩！」

『…山田君…っ』

「A先輩、俺と一緒に来て下さい」

気付けば、A先輩の目の前に立っていて、応援席に近づいた俺を見て騒がしくなる周りの事なんか気にならへん。

A先輩の腕を掴んでる別の手が、嫌で仕方なくて…

よりによって、紗奈先輩達おらへんし。

男Ａ「またお前かよ。ってか、俺が先にAちゃんに声掛けたんやけど？」

「…悪いっすけど諦めてくれません？」

男Ａ「は？何言って、」

「A先輩は譲られへんっす。…A先輩」

真っ直ぐ、A先輩を見る。

「俺と一緒に来て？」

紙に書いてあったのは

〝隣にいてほしい人〟

伸ばされた小さい手。

掴めば、すっぽり隠れるこの手を離したくないって思った。