・ ゞ ページ38
『……だ…くん？…山田君！』
「え…？」
呼びかけにハッとして顔を上げれば、心配そうに俺を見上げるA先輩の顔がすぐ近くにあって。
「っ…」
『…大丈夫？』
「…大丈夫っす。…すんません、ボーッとしてました」
『ふふっ、山田君でもボーッとするんだね』
「そりゃしますよ。まぁ、A先輩には負けますけど？(笑)」
『むっ、それってどういう意味？』
「だってA先輩、いつもボーッとしてますやん」
『そんな事ないもん！』
「いやいや、この前も教室のドアに挟まれてたし…」
『っ…！…み、見てたの…！？』
「そりゃバッチリと(笑)」
『ちょっ、恥ずかしいから忘れて…！』
「え〜、どうしよっかな？(ﾆﾔﾘ)」
『…山田君、私が先輩って事忘れてるでしょ？』
「え？(笑)」
『もうっ』
拗ねてそっぽ向くA先輩が可愛い。
無意識にその小さい頭を撫でようと伸ばした手。
紗奈「山田、それセクハラ。」
茉耶「今、Aの頭撫でようとしたやろ！」
紗奈「A、こっちおいで！」
茉耶「男は狼なんやで！」
『わっ、ちょっ、二人とも…」
ほら、邪魔してきた…
自分達の背後にA先輩を隠す二人。
紗奈「ってか山田さ、私ら着替えやなあかんねんけど？」
「…」
茉耶「このままやったら、うちの可愛いAが体操服のまま授業受ける事になるけど？」
「…はよ行って下さい」
紗奈「ふっ」
茉耶「はいはい。ほな、A行くで〜(笑)」
『えっ、待ってや〜』
「A先輩…」
『へ？…っ』
先に歩き出した二人を追うように体の向きを変えたA先輩の細っこい腕を掴んで引き寄せれば、簡単に俺の胸に寄り掛かる小柄な体。
ビックリした表情のA先輩のポニーテールが揺れる。
「……リレーの時、」
『え…？』
「…俺の事、応援してほしいっす」
『っ……うん』
「……俺だけ見てて？」
『…っ』
チラリと見えたA先輩の耳が赤く染まって小さく頭を縦に振ったA先輩を見て頭の中で、はっしーとのやりとりを思い出す。
「それに、その人は凄い人やし……俺なんか敵わへんよ」
橋本「…じゃあ、諦めんの？」
「……わからん」
橋本「わからん？…ほんまに？」
「…なん？」
橋本「だって哲人、諦められへんって顔してるやん(笑)」
A先輩…
勝手に好きになって、それ以上を望む俺はズルい奴かな？
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作者名：しめじ。 | 作成日時：2020年3月23日 23時
