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「姐さんは…何も悪くないじゃないですか!!」
中也は強く唇を噛み締める。尾崎は中也が拾ってくれた荷物を受け取り、寂しそうに見る。
「話す事柄の順を間違えたのじゃよ。私が悪い」
「じゃあ、姐さんは……アイツに勘違いされたままでいいんですか」
「……良くはないのう。せめて、誤解は解いておきたい…」
じゃあ、と中也は口を開くが、何も言わず閉じた。何とも言えない空気が漂う。その時、扉が大きな音を立てて開いた。
「コウヨウ!Aはいる!?」
「エリス嬢…今、Aは…」
「?何かあったの?チュウヤ」
エリスは首を傾げる。中也は何と言っていいか分からず、黙る。代わりに尾崎が答える。
「Aはここにはおらぬ。武装探偵社にいるのじゃよ」
「どうして?」
「私が『金色夜叉』を見せた時、通りかかった探偵社員に見つかってのう。私がAを殺そうとしたように見えたらしい」
「ひどい!そんなはずないじゃない!」
「そうだねぇ。紅葉君は、そんなことするはずないのにねえ」
現れたのは森だ。中也と尾崎は姿勢を正す。まさかこの部屋に来ると思っていなかったのか、少し焦っているように見える。
「話は聞いたよ。早く報告してくれていたら良かったのに…」
「忘れておったわ」
「紅葉君…!」
森は大袈裟に悲しむ。中也は苦笑。尾崎は無表情のまま。森は一つ咳払いをし、本題に入る。
「さて、Aちゃんがいなくなった今、二人はどうする気かな?」
「俺は連れ戻したいと思っています。俺はともかく、姐さんのために」
「中也…」
「なるほど。紅葉君は?」
「…誤解を解きたい、かのう」
なるほどと森は頷いた。
「取り返せなくても、せめて話す環境を作らないといけないね。だが、しばらくは社から出ないだろう。少し、待とうか」
「俺が調べます。行動くらいは、簡単にわかるので」
「私はあまり関与しない。人虎君とは違うから、
「「了解」」
森が去ったあと、中也は尾崎に向き直る。
「後悔しているなんて、姐さんらしくないです。Aと話をしましょう」
「…そうじゃの。……こんな気持ちじゃったのだろうか」
「何がですか?」
「探偵社にいる、Aの兄じゃよ。話したくても話せぬ気持ちが、わかった気がするのう」
尾崎は少しだけ、口元を緩ませた。
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ナオミ←本名ですわ - 記憶喪失のお姉様をお持ちの敦さんは嘸辛かったでしょうね・・・でも!また仲良くなってよかったですわ! (2018年5月23日 22時) (レス) id: 505b3d50a2 (このIDを非表示/違反報告)
涼(プロフ) - 面白かったです♪ (2018年4月16日 16時) (レス) id: da69d52ea0 (このIDを非表示/違反報告)
arena(プロフ) - ゼロさん» あ、本当です…。今直しました!ご指摘感謝します! (2018年4月2日 9時) (レス) id: eb7b6b7134 (このIDを非表示/違反報告)
ゼロ(プロフ) - 11ページの太宰さんの台詞何ですけど妹ではなく姉じゃないですか? (2018年4月1日 23時) (レス) id: 8a8cf15df7 (このIDを非表示/違反報告)
蚊 - 続編おめでとう!僕的にはポートマフィアに頑張ってほしいなぁ姐さんかわいそう。。。 (2018年2月16日 15時) (レス) id: 630a444802 (このIDを非表示/違反報告)
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