欲しいもの ページ22
Aside
「一時間後にまた伺いますので…それまでごゆっくり。」
その言葉と共に、重い扉の閉まる音がすると、気が抜けて思わず溜息が出てしまった。
……疲れた。
あと、お腹も減った。
部屋に戻ってから、もう三時間は礼儀作法と音楽の指導を受けている。
今までこんなに長くはなかったが、この国を治めているアイシン家の血族の集まる社交界が、この城で開かれるからそれに備えているんだろう。
力なく目の前にあるピアノの鍵盤を叩くと、音が虚しく部屋に響いた。
貴「……。」
カリフ「よお。……大丈夫？」
貴「うわぁっ！！カリ……」
カリフ「しーっ。バレたらどうするんだよ。」
貴「ご、ごめん……いつ来たの？」
カリフ「今さっき。ベランダの窓が開いてたから、様子気になって見に来た！」
そう言うと、カリフは歯を見せて太陽みたいに笑った。
私はその笑顔を見て、少しだけ気持ちが軽くなったような気がした。
……やっぱり、カリフといると落ち着く。
カリフ「それにしても、ずっと礼儀作法とかピアノの練習とかさ、辛くない？」
貴「うん……カリフは何やってたの？」
カリフ「政治の勉強ー……やっぱり難しいや。」
貴「……でも、カリフは頭良いじゃん。」
カリフ「？？何だよ。」
貴「…ううん、何でもないよ！」
カリフ「ふーん……」
少しつまらなそうに口を尖らせながら、カリフは私の隣に座った。
本当、カリフは私と違って頭が良い。
どうしたらこんなにも差が出るのかって言うくらいに。
…正直、羨ましい。
カリフ「……あ。」
貴「？？どうしたの？」
カリフ「そう言えば、そろそろ誕生日だなーって思って。」
貴「そうだったね……忘れてた。」
……いや、本当はちゃんと覚えていた。
誕生日だからと言って、誰かからプレゼントをもらえる訳ではないし、祝ってもらえる訳でもない。
だから、変に期待しないように、いつも忘れているフリをしていた。
カリフ「プレゼント、もらうなら何がいい？」
貴「…え？何でそんな……」
カリフ「どうせもらえないけどさー、話すくらい良いじゃんか！」
貴「……本かな。」
カリフ「本ー？……あ、もしかして"海の戦士ソラ"とか？」
貴「……医学。」
カリフ「医学？！……ああ、だから今日医学会を覗いてたのか。」
貴「……うん。」
……もし、
もし、私が医学に興味があるってことを父上に伝えたらどうなるんだろう。
カリフでも驚くぐらいだ。
父上は……怒るかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桃千代(プロフ) - 三暁 那保さん» いえいえ！こちらこそ有難うございます！これからも頑張って下さい！！ (2016年10月12日 23時) (
レス) id: c288c3816e (このIDを非表示/違反報告)
三暁 那保(プロフ) - 桃千代さん» ありがとうございます！ 近いうちに、こちらでも公開しますね。素敵なイラスト、本当にありがとうございました！ (2016年10月12日 21時) (レス) id: a75da1e993 (このIDを非表示/違反報告)
桃千代(プロフ) - 喜んで頂けて本当に嬉しいです！イラスト公開して大丈夫です。有り難うございます！！ (2016年10月12日 21時) (レス) id: 688e39c415 (このIDを非表示/違反報告)
三暁 那保(プロフ) - イラスト、どうもありがとうございます！ すごい！ 早い！ そして綺麗です！ なんかカッコいいですね！ とても嬉しいです！ ありがとうございます！ こちらのイラスト、私の方でも公開したいのですが、よろしいでしょうか？ (2016年10月12日 21時) (レス) id: a75da1e993 (このIDを非表示/違反報告)
桃千代(プロフ) - angel~天使~さん» コメント有難うございます！そんな風に言って頂けるなんて、本当に嬉しいです。更新遅くて本当に申し訳ありません。これから頑張りますね！ (2016年10月8日 13時) (レス) id: c288c3816e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桃千代 | 作成日時：2016年5月25日 1時
