夢 ページ20
＊＊＊
ロー「……。」
貴「……。」
町の病院…ローの家を出てから、ずっと沈黙が続いている。
口を開いても、「ここで右に曲がる」とか「こっちの方が近い」とか、そんな感じの事だけだ。
ローとはあまり話した事は無かったが、私の嘘がばれてから、もっと話しづらくなってしまった様な気がする。
前を歩くローの背中をじっと見つめた。
すると、ローは急に立ち止まって私の方へ振り返った。
目が合って、思わず私は顔を背ける。
ロー「…おい。」
貴「え？…な、何？」
ロー「これ、お前のだろ。」
そう言って、ローは私の手に何かを押し付けた。
ペンダントだ。
それを見て、いつも首に付けていた筈のペンダントが無い事に今気付いた。
……あと、ペンダントの蓋が壊れている事にも。
ロー「俺が落として壊れた。…悪い。」
貴「……大丈夫。」
そう言うと、ローは再び歩き出した。
私もその後に続く。
そう言えば…ローは、この写真を見たんだろうか。
貴「…あのさ。」
ロー「やっぱり弁償か。」
貴「……え、いやいや！そうじゃなくて…」
ロー「なんだよ。」
面倒臭そうに溜息を吐いたローの目を、真っ直ぐに見つめた。
ごくり、と自分の喉の動く音がした。
貴「写真見た…よね。」
ロー「…ああ。お前、双子なんだな。」
貴「……うん。」
ロー「Aが上なのか？」
貴「私が妹。カリフ…銀髪の子が上なんだ。今はもう……いないけどね。」
ロー「…そうか。……あ。」
ふと、何かを思い出したかの様に、ローは私の顔を見た。
貴「？？」
ロー「あのさ、お前医療大国にいたんだろ？」
貴「う、うん。」
ロー「…じゃあ医学の勉強とか、してたのか？」
貴「…まあ、うん。」
ローは少し間を置いてから、真っ直ぐに私を見て、聞いた。
その目はいつもより、生き生きとしているような気がする。
ロー「お前も、医者が夢なのか？」
……夢。
私の、夢。
''お前は、優秀な王族の男と結婚するんだぞ？…それが私達の願いであり、お前の夢だ。''
''何故医学なぞ勉強している！！そんな暇があるなら、国の歴史や政治を学びなさい！！''
''カリフの様に、王家の子としての自覚は無いのか！！…全く、一族の恥だ。"
夢、なんて…
ロー「…A？」
冷たい何かが、頬を伝った。
ローが私の側へと近づく。
……わからない。
夢って、持っても良いものなんだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 116人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桃千代(プロフ) - 三暁 那保さん» いえいえ！こちらこそ有難うございます！これからも頑張って下さい！！ (2016年10月12日 23時) (
レス) id: c288c3816e (このIDを非表示/違反報告)
三暁 那保(プロフ) - 桃千代さん» ありがとうございます！ 近いうちに、こちらでも公開しますね。素敵なイラスト、本当にありがとうございました！ (2016年10月12日 21時) (レス) id: a75da1e993 (このIDを非表示/違反報告)
桃千代(プロフ) - 喜んで頂けて本当に嬉しいです！イラスト公開して大丈夫です。有り難うございます！！ (2016年10月12日 21時) (レス) id: 688e39c415 (このIDを非表示/違反報告)
三暁 那保(プロフ) - イラスト、どうもありがとうございます！ すごい！ 早い！ そして綺麗です！ なんかカッコいいですね！ とても嬉しいです！ ありがとうございます！ こちらのイラスト、私の方でも公開したいのですが、よろしいでしょうか？ (2016年10月12日 21時) (レス) id: a75da1e993 (このIDを非表示/違反報告)
桃千代(プロフ) - angel~天使~さん» コメント有難うございます！そんな風に言って頂けるなんて、本当に嬉しいです。更新遅くて本当に申し訳ありません。これから頑張りますね！ (2016年10月8日 13時) (レス) id: c288c3816e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：桃千代 | 作成日時：2016年5月25日 1時
