雨 -2 ページ50
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「わたくしだって、ぜひにと煉獄様を選んでお屋敷に行ったわけではありませんわ」
A殿にしては、珍しくまるで挑むような声色。
「鬼殺隊の隊士様のお役にたつお仕事をしたくて、しのぶさんにお願いしたら、柱の屋敷付きの使用人というお仕事があると言われましたの」
A殿は、今までの「鬼狩り様」という言葉ではなく、鬼殺隊の隊士、と言った。俺はそこに、彼女なりの決意のようなものを感じ取る。
「それだったらわたくしもお役に立てることもあろうかと、お声をかけてくださる隊士様をお待ちしてましたら、たまたま煉獄様が最初にお声かけくださった、ただそれだけのことですわ」
「じゃあ、俺が先に声をかけていたら、この屋敷に来たのか」
俺はそんなことを口走る。一瞬、A殿の目が揺らぐ。
「……ええ、もちろんですわ」
「誰でもよかったのか」
A殿は、目を伏せた。その表情の意味がわからなくて、無意識に力がこもる。
「―――冨岡様、腕が、少し、」
俺はA殿の腕を掴んだまま、ゆっくりと体を寄せる。ゴロゴロと、再び空が唸る。三つ数えないうちに、空がぱぱっと明るくなり、そして雷鳴が轟く。A殿が肩を震わせ、顔を伏せた。目の前に、A殿の白い頸筋がある。
誘い出されるように、俺は彼女の真っ白の首に噛みついた。
突然密着した体に、首に走る痛みにA殿が悲鳴をあげる。かき消すように再び雷鳴が空を引き裂く。そのままずるずると、俺はA殿を圧し潰すように、膝をついた。
「冨岡様、お戯れはよして」
俺から酒の匂いをかぎ取ったらしい彼女は、弱弱しく片手で押し返そうとするけれど、俺はその片手を払った。そして髪がじんわりと汗で張り付く彼女の額を撫でる。ずっと触りたかった唇に触れる。ずっと触りたかった、と口をついて出そうになる。彼女が身をよじった拍子に、襟もとからぽとりと何かが落ちた。
「冨岡様、お願い」
A殿が、ほとんど涙声で言った。俺はようやく、はっとして手を放す。
―――恐ろしいことをしてしまった、
さあ、と顔から血の気が引くのが分かった。慌てて彼女から体を離すと、あれほど俺の頭を鈍らせていたアルコールがひといきに揮発して、怯えるA殿の震えまで、くっきりと見えるかのようだった。
ふと、彼女の右手のあたりに落ちているものを見つける。
「……護符……」
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (
レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます！ (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です！ずっと待ってました〜っ！！これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イトカワ | 作成日時：2020年4月19日 22時
