炎柱邸を訪ねる -3 ページ47
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「う、宇随、…冨岡はいったいどうしたのだ?」
困惑する煉獄を置き去りに、俺はとうとう腹を押さえて大笑する。
あの冨岡の顔、傑作だった。
「いや、煉獄よお、それで布団一組しかなくて、どうしたんだ?」
「あ、ああ、俺は布団もかけずに座敷で寝ざるを得なくてな、初日から腹を冷やしたのだが…」
「ひー!もうダメだ、派手に面白すぎるぜお前ら!」
そしてひとしきり笑って、俺は煉獄の肩をポンと叩いて言った。
「そういうわけだから、Aさんは冨岡にやれ。代わりの家政婦を俺も一緒に頼んでやるから」
「…すまん!本当に意味がわからん!もう少し説明をしてはもらえないか!」
つまりだ、と俺は眉を下げる後輩に一から説明してやった。
Aさんを間一髪助けたという冨岡の話からは、冨岡がもとよりAさんをずいぶん気にかけていた様子がうかがえること。
Aさんが煉獄を杏寿郎さんと呼ぶことにはげしく動揺していたことと、先ほどの反応からして、冨岡がAさんに懸想しているのが決定的であること。
「だからAさんは派手に譲ってやれ」
俺はざっと考えた口上を耳打ちする。
果たして煉獄は、真面目な顔で頷いて、Aさんを呼び寄せた。
冨岡が出ていったことに気づいていなかったAさんは一瞬戸惑って、「あのう、冨岡様は?」と煉獄に尋ねる。
「今しがた、迎える支度がしたいと言って出ていった!
どうも冨岡も住み込みの家政婦を探していたそうだ!
ただどういうものか想像がつかんと言うので、
明日いっぱいまでAさんにお試しで水柱邸に行ってもらおうかと思うのだが、いかがだろうか!」
水柱邸に、という言葉に、ほんの少しAさんが嬉しそうな表情を漏らしたのを俺は見逃さなかった。
そりゃそうだ、玄関を開けた瞬間からAさんは、冨岡しか見ていなかった。
Aさんを気に入っている様子の煉獄には申し訳ないが、想い合っている様子の二人をくっつけずにいられようか。
Aさんは煉獄に促され、いそいそと出かける支度を始める。
「屋敷までは俺が送っていこう」
俺はそう言ってAさんの淹れたお茶をひといきに飲み干すと立ち上がった。
「宇随、もし…」
そして煉獄が言いづらそうに言う。
「冨岡が、妙な勘違いをしているようだったら、誤解を解いておいてくれ」
俺は柄にもなく神妙に頷いた。
妙な方向に誘導したことは反省している。
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時