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春の嵐 -2 ページ5

***


しかし、雨はやむどころかますます激しくなった。
春の嵐のような風に、ぬるい雨が吹き荒れる。
ごく遠くの西の空が、薄く紫に光ったような気がした。
これはしばらくやみそうにもない。

道場から裏手のひさし下を通って母屋に戻る途中、門のほうを見やるA殿を見つけた。

「A殿。」

『……冨岡様。
 あら、お椀とお皿をわざわざ……、お気遣い恐れ入りますわ。
 濡れてしまっては大変ですから、中へお入りくださいませ。』

「A殿こそ、こんなところで何を。」

『ああ、花が届け物にと町へ出たのですけれど、この天気ですから、どうにも気になってしまって。』

そう言って、A殿はまた頬のあたりに手をあてた。
癖なのだろう。

「ここで見ていても変わるまい。
 A殿が風邪を引いたほうがよほど花殿も困るだろう。」

『それも、そうですわね……。』

名残惜しそうに外を見やりながらも、A殿は玄関のほうへ戻ろうとする。
その瞬間、後ろで空がぴかりと光り、ドォンという音が遅れて響いた。

『いやっ……』

A殿は驚いた拍子に玄関の石段につまずいた。
……危ない、俺はとっさにその体を抱きとめる。
また、空が鋭く光った。
A殿がぎゅっと目を閉じる。
ゴロゴロ、と雷鳴がとどろく。


***

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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時

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