春の嵐 -1 ページ4
***
『差し支えなければ、なのですが……。』
ご息女、A殿がそう言って切り出したことには、どうもご両親が三日ほど家を空けているそうで、戻られるまで滞在してくれないか、と。
『わたくしの命を救ってくださった鬼狩り様のことを、両親もずっと気にかけておりました。
きっと直接お礼を申したいと言うはずでございます。
……厚かましいお願いなのは、承知の上ではあるのですけれど……。』
困ったように言われて、すげなく断るわけにもいかず、幸い数日は予定もなく。
夜の警備にはここから出ればよいか、と俺は諦めて数日腰を据えることととした。
そう答えると、A殿はまたはかなげに微笑んだ。
……お嬢さんとは、こういうものなのかもしれないが、笑った顔がまるで泣き顔のようで、胸が痛みさえするな。
『お相手できるものがおらず申し訳ないのですが、
奥に鬼狩り様のための道場を据えております。
どうぞ、ご自由にお使いくださいませ。』
そういうわけで、俺はいまその道場で一人、基礎鍛錬にいそしむ。
ふと気づけば、入口のあたりに握り飯と冷えたお茶、団子が置かれていた。
没頭していたから気づかなかったらしい。
団子の上には可愛らしく桜の砂糖漬けがのせてあって、そうだ、季節はもう春なのかと思った。
「……雨があがったら、走りに出るか。」
団子をほおばりながら、俺は誰にともなくつぶやいた。
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時