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嫌悪 ページ25

***


夕方、敬一郎さんが再び我が家を訪ねた。
庭に二人して出て、すっかり均されてしまった庭を眺める。

「藤の樹、伐ってしまったのですね」

『…ええ』

「ようやく、父君も覚悟を決められたようだ」

そう言うと、敬一郎さんはそうっと私の肩に触れる。
反射的に避けてから、しまった、と思う。

「…Aさん」

敬一郎さんは、苛立ちをあらわにする。
私はこの人が怖い、私の名前を呼ぶだけで、私を従わせようとしてくる。

「…やはり、あの日から様子がおかしいですね。あの…なんですか、冨岡とかいう鬼狩りが来てから」

まあ確かに、上品な雰囲気の男ではありましたが。

『何のことをおっしゃっているのか、わかりませんわ』

「大丈夫です、結婚を前に女性の気が塞ぐのも、なんとはなしに他へなびいてしまうのも、よくあること」

敬一郎さんは、そのすべすべと柔らかな手で、私の頬に触れる。

『っ…』

「Aさん、今夜、ご両親ともに我が家へご招待しております。
 使用人にも暇を出したと聞いています」

私のお伝えしたいこと、お分かりいただけますか?と、敬一郎さんは薄く笑った。
口調の穏やかさのわりに、私の手を掴む力は強い。
そんな話は聞いていない、私はざわっと肌が粟立つのを感じる。
敬一郎さんは、妙にぎらぎらとした目で私を見下ろした。

『敬一郎さん、いけません』

「あなたの父君、焦っておられますよ」

両肩を掴まれ、その感触にぞっとした私は、思わず敬一郎さんを突き飛ばす。
そしてそのまま、門から外に飛び出した。
日が暮れてから外に出てはならない、と父から強く言われていたことも忘れていた。
石畳の硬い道に、庭へ出るためだけのつっかけだと足が痛む。
Aさん、と後ろから敬一郎さんの追ってくる声が聞こえる。

―――どうしよう、

私は思わず道を逸れ、雑木林の中へ駆け込んだ。
リー、リー、と虫のなく声と、枝のこすれるざわめきとが、しんとした夜に積もっている。
…寒い。
樹にもたれかかってしゃがむと、足首にしたくさが冷たかった。


***

吐露 -1→←いの一番に考えたこと



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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時

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