胡蝶しのぶ -2 ページ16
***
門を開けて俺の顔を見た花殿は、一瞬驚いたような顔をした。
「冨岡様」
そして、前に訪れたときは呼ばなかった俺の名前を呼んだ。
「仲間との合流と、こまごました支度を頼みたい」
「ええ、ええ。もちろんでございます。
お入りくださいませ」
懐かしいと思った。
ちらりと藤棚のほうを見やると、真夏の陽射しにたっぷり洗われたらしい緑の蔦の間から、いく本も豆がぶら下がっている。
玄関まで通されたところで、花殿が屋敷の主人を呼ぶ。
「……冨岡様」
屋敷の主人は、おだやかな笑顔を張り付けて現れた。
「またお越しいただけて幸いでございます。
さあ、前と同じ座敷を用意しておりますから、どうぞ」
「いや、今回は後からもう一人来る。
すまないが、狭くて構わないから隣り合った部屋を二つ借りたい。
それから、小柄な女ものの着物と草履を、買い取りで構わないからすぐに用意してもらえないか?」
「女性用の、ですか?
もちろんすぐにお出ししますよ。うちは呉服屋もやってますから。お連れ様はいつごろ?」
「おそらくすぐ―――、」
俺がそこまで言ったところで、門のあたりから、ごめんください、と胡蝶の歌うような声が聞こえてきた。
「今、到着したようだ」
「ぴったりでございますね。
花、鬼狩り様を中座敷へお通しして。
冨岡様、こちらへ」
そう言って、屋敷の主人は、以前無礼な隊士が宴会を開いていた中座敷に俺を通す。
畳が新しくなっている。
俺は苦々しく思った。
***
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瑞姫(プロフ) - 今吐露2でリアルに泣いております、、思わずよくわからない報告コメント申し訳ないですめちゃくちゃ好きですこの作品 (2020年6月24日 23時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
pink0223xxx(プロフ) - はじめまして、更新お疲れ様です。素敵な言葉遣いや雰囲気が想像がしやすくてどんどん引き込まれていきました。泣いたり笑ったり楽しかったです。応援してます! (2020年6月3日 21時) (レス) id: 086d84223c (このIDを非表示/違反報告)
おんたま(プロフ) - はじめまして。更新お疲れさまです。完成度が高くすごく素敵な作品だと思います。無理のない範囲で更新頑張ってください。応援しています。 (2020年6月3日 2時) (レス) id: 8f0607afea (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - お返事できてないお三方、コメント返信できてなくてすみません、いつも更新遅くてすみません、読んでくれてありがとうございますloveです (2020年6月2日 19時) (レス) id: 100d291aa9 (このIDを非表示/違反報告)
madoka(プロフ) - 更新お疲れ様です!ずっと待ってました〜っ!!これからも頑張ってください。 (2020年5月24日 21時) (レス) id: f3e815359c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月19日 22時