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11話 ページ11

***


翌朝、私は久しぶりに、目覚めた。要は、眠れたということだ。……きっと、疲労が限界だったのだ、と自分に言い聞かせる。ゆっくりと起き上がる。横をちらりと見れば、童磨の裸の上半身が薄い早朝の明るさにぼんやりと照らされている。
ふと視線を足元に落とすと、ベッドの下の床に乾いた血のこびりついたナイフが転がっていた。思わず凝視する。

「それで俺を殺そうと思ってる?」

思わず息が止まる。

『……そんなこと考えてもいない。』

口がからからに乾いて、ほとんど声が出なかったが、何とかそう答え、背中から腕を絡めてくる童磨を避ける。全身の皮膚が粟立つのがわかる。
これをもう外に出してはいけない、私はそう思って、職場に急病で有給を取りたいと連絡を入れた。真面目に働いてきたかいあって、特段詮索されることなく、課長は「なんなら明日も休んでいいから、しっかり体調を戻すんですよ。」と言いさえした。
電話を切って、私は二人掛けの食卓について、にこにことお茶を飲んでいる男に視線を戻す。

『あなたを外に出すわけにはいかない。』

「あはっ、一日中、Aちゃんが相手してくれるってことかな?」

何してくれるの?童磨は屈託なく言う。
怖い、怖いのは、この男は常に笑ってはいるが、それが下卑た笑いでもなければ、邪悪な気配もない、ただひたすらに子どものような笑顔なのだ。それが、底知れなくて怖い。全然別のしくみの中で生きているみたいだ。

『……なんでも。』

「……へえ。」

ほんの少し、笑みが薄くなる。
人間を相手にしているわけではないから、どの言葉が逆鱗に触れるか、まったくわからない。
ぴんと張った針金の上を歩かされている。

「でも俺、差し出されると食欲無くすタイプなんだよね。」

童磨はそう言って、テレビを点けた。
遠くのほうで、パトカーと救急車のサイレンが聞こえる気がする。

―――人目の被害者の……

チャンネルを変える。

―――きょう未明、細波町の住宅街で女性が倒れているとの通報があり、病院に運ばれましたが死亡が確認されました。
状況から警察は殺人事件とみて捜査を続けています。
次のニュースです。―――

私はもう、―――これもあなたがやったのか―――と聞くこともできない。

「なんでもやってくれるなら、俺の絵でも描いてよ。」

童磨はさして興味もなさそうに言った。


***

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ゆん - 性癖ドストライクで死にました← (2021年8月21日 13時) (レス) id: f3622d769a (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - つるかめさん» 恐縮です!ありがとうございます!こんな趣味全開の書き物楽しんでもらえたなら嬉しいです。お星様連打してくれる人一番好き (2020年4月26日 18時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
つるかめ(プロフ) - こんなに一番右のお星さま連打したのは初めてです…。言葉選びといい世界観といいめちゃくちゃ好きでした!完結おめでとうございます!素敵な小説をありがとうございました!! (2020年4月26日 18時) (レス) id: 21a20e72bc (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - まほろさん» これが性癖のど真ん中…!この変態さんめ!コメントありがとうございます、頑張って書きます!! (2020年4月25日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
まほろ(プロフ) - 性癖のど真ん中を貫かれました。感情を持てあましすぎて読みながら踊り狂ってます (2020年4月25日 3時) (レス) id: 83522f25c5 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年4月15日 1時

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