［完］黒死牟邸に居候してます (ページ29)

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受け入れる側 ② ページ29

しかし、上弦の鬼の体ってこんなに重いのか。
私全然動ける気がしない。
よくこんな体で、この人はひょいひょいと動けるな、と妙に感心していると、私の姿をした黒死牟さんが、じっと手のひらを見つめ始めた。

ーーーやべえ！透けてきている！

「これは……、どうすればよいのだ。」

黒死牟さんもさすがにあわてたようで、すごく久しぶりに口をきいた。
まぁ、私の声なんだけど……。気持ち悪！

『は、はやく私の中に入ってください！』

私はそう言って、黒死牟さんの重い重い鉛のような腕を開く。
黒死牟さんはゆらゆらと立ち上がって、私にのしかかった。
じわ、と(黒死牟さんの入っている)私の体が重くなり、水を含んだように少し膨らんだかと思うと、生ぬるいゼリーのようにドロッと(私の入っている)黒死牟さんの体を覆った。
すっかり(黒死牟さんの入っている)私の体が(私の入っている)黒死牟さんの体をくるんだら、次は足の先からゆっくりと、脈打つくらいの速さで締め上げられていく。
頭に血が上って、このままだと頭がぼんと爆ぜてしまうな、と思った瞬間に、急激に解放され、ぶるん、と体が裏返るような感覚とともに黒死牟さんが流れ込んできた。

ーーーえっ、

入られる瞬間、全身ねぶられるような快感に襲われ、私はほとんど悲鳴をあげた。ーーー黒死牟さんの声だったけど。

ーーー嘘、嘘、ウソでしょ

黒死牟さんは慣れない様子で私の体の中をぐるぐる巡っている。
危うげな動きが、余計に破滅的な快感を引き摺り出す。
おそらく向こう側で黒死牟さんも、あまりにも気持ちよくて大混乱なのだろう、小刻みに震えている。

ーーーあ、あ、あ、

そして、もうこれ以上潜られたら死んでしまう、どっちが死ぬのかわからないけど、というところで、引き裂かれるように二つに分かれた。

私も黒死牟さんも、もはや喋ることも叶わず転がって胸を上下させることしかできない。
かろうじて首を傾けて自分の手を見れば、すっかり実体が戻っていた。

ーーーあ、戻ってる。

実体と自分の体が戻っていた。
ああ、よかった。
あのままだったら私、上弦の壱として生きていかなければならないところだった。

『入られるってあんな感じなんですねえ。』

「……。」

『あれじゃあ、黒死牟さんが泣いてよがっちゃうのも頷けます。』

「泣いては……いない。」

『……よがってることは否定しないのね。
win-winの関係でよかったわ。』