［完］黒死牟邸に居候してます (ページ24)

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あのお方の回想 ① ページ24

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黒死牟があれを鬼として連れてきたとき、その気配の奇妙さに戸惑ったのを覚えている。
黒死牟の言うには、自身が鬼になったときと同等の量、私の血を分け与えたというが、その鬼から上弦に匹敵するような才気どころか、鬼としての意識がかけらも感じられなかった。

『ギャーーーッ！！！
ここ、どこ！？
怖すぎ！？』

「……黙れ……。御前だぞ……。」

そして、全ての鬼が感じるはずの私への畏怖もない。
これは単にこの鬼が察しも頭も悪いからなのかもしれないが、私の不快を感じ取った黒死牟が慌ててそれを回収し頭を掴んで畳に擦り付ける。駄鬼は、痛ーい！と叫びながらじたばたする。

「駄作。」

私はそれに声をかける。

「お前は、自分が鬼となり、正にその始祖の前にいるという自覚がないのか？」

『鬼！？』

それは素っ頓狂な声をあげると、懐中から手鏡を取り出し、覗き込んでまたギャーーッ！と言った！
目が真っ赤！
私の血をたっぷり与えられたにも関わらず、「目が真っ赤！」程度しか外見が変化していないことも特異だ。

「お前はこれで、手足をもがれようが火をつけられようがすぐに再生する体となった。
その代わりに、もう二度と太陽の下を歩けぬ。」

私はそう言って、鬼舞辻オリエンテーションの手元資料を配布する。
ついでだから黒死牟にもやった。

「眠らず、死なぬ体になった。
お前の腹を満たせるのは人の肉だけだ。
殺して食え、そして強くなれ。
強くなればより多くの私の血を分け与えよう。」

殺して食え、強くなれ、は鬼舞辻コーポレーションの社訓である。

『いや、字読めないし、そもそも人間食うとか、何言ってるの！？
ほんと無理ですううう！！！』

駄鬼は、ビエーンと汚い泣き声をあげてつっぷした。
寝ずに作った(鬼は寝ないけどね)鬼舞辻オリエンテーションの資料がはらはらと床に落ちる。
この駄作が。とんだゴミを持ち込んだな。
私は黒死牟を睨みつける。

『人を殺すなんて良くないよお……』

駄鬼はなおもぐずっている。