［完］黒死牟邸に居候してます (ページ16)

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嘔吐 ② ページ16

「あのお方からね！
つい口を滑らしたみたいな感じで、
黒死牟殿が鬼のお弟子さんを温めていると聞いたものだから、
気になってしまってね！」

「弟子……。そんなものは、いない……。」

「またまた！」

次の瞬間、奥座敷から私の埋まっている部屋までに連なる床板が、ばりばり！とものすごい音を立てて巻き上がった。

えっ、寒！！！

それにしてもこの来客、シンプルに頭おかしくない？
いや、猗窩座さんも座敷吹き飛ばしてたけど、黒死牟さんもえらいならえらいでちやんと格下のしつけをしたほうがいいのでは？

「ほら！
……なんかちょっと、思ったのと違う感じで埋まってはいるが……。
こんな独特な気配の鬼、秘蔵していたなんて水臭いではないか！」

パチン、と来客は扇を閉じ、そのままつんつんと私の右側の顔を突つく。

「お弟子の女の子！
ほらお近づきの印だよ！」

そして懐から、あろうことか新鮮な人の手を取り出した。
オエーッ！なんてもの入れてんだ！せめてラップにくるめ。
私はマジで生の人肉は無理なので、ずぼぼ、と土に口を埋め、右目だけでじとりと睨みつける。気持ち悪いし臭いから早くそれをしまって帰ってほしい。

「それはあと2秒で死ぬ瀕死の小鼠より貧弱で粟粒を砕いたかけらより価値がない……。
かかずらわっている……時間が、無駄だ……。」

相変わらず私への罵詈雑言だけは流暢な黒死牟さんは、そう言いながらまあまあの強さで土を蹴り、私の頭を埋めてしまう。
うう、目に砂が入って痛い。

「黒死牟殿はつれないなあ。
まあ、挨拶は済ませたから、また来るね！
次は名前を教えてくれると嬉しいなあ！」

来客は、朗らかに笑って私にそう声をかけると、ズボッと頭の上あたりに何かを刺して、そのままどこかへ消えていった。
その気配が消えてようやく、私は地面からへろへろと這い出ると、堪えていたゲロを吐いた。
頭のあたりに刺されていた手がそのへんに転がっている。

『黒死牟殿～！なんですかあれは～！
Aはもうあれとは二度と会いたくありません～！』

「こんな……雑草の端切れを踏み潰したようなのを飼っていることが、……こともあろうに……童磨に知れてしまったとは……。
一生の辱め……。」

黒死牟さんは、私の泣き言には答えず、独り言をつぶやき、

「A草、直しておけ。」

そう言って消えた。

『だから！大工に言って！
っていうかこれ明日になったら直ってるし！』