［完］黒死牟邸に居候してます (ページ37)

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鬼狩りと遭遇した夜 ③ ページ37

橋に差し掛かる。
私は意を決して、川に飛び込んだ。
しばらくは小さくなって、石の下にでも隠れていよう。

「ーーーあれ？？夜顔ちゃん、どこ行っちゃったの？？？」

橋の方から鬼狩りの間抜けな声が聞こえる。
なんとか巻けたようだ。

「ーー善逸ーー。」

「ハッ、やべ、戻んないと。
夜顔ちゃん、無事っぽかったし大丈夫だよな、多分。」

鬼狩りは呟くと、無事どこかへ去っていったようだ。
私はほっと一息ついて、いそいそと石の下から這い出る。はーよかった、と思ったその瞬間、苔に足を滑らせて、ザバーッと川に流されていった。

『まっ、まっ、まって！？！？これは死ぬかも！！！』

海まで流れ着く頃にはとうに透明になって、月の光に溶けてしまう。

『嫌だァーーー！！！助けて黒死牟さん！！！』

…ーーーザバッ

「うるさいぞ…。」

力の限り叫んだのが奏功したのか、何の幸運か、私は下流で無事、黒死牟さんに拾われた。
川の流れに揉まれたせいで、私は体の半分程度を欠損してしまった。

『ビエーン！このまま海に流れてクラゲになっちゃうところでしたよお～！！！
見て！体もだいぶ流れていってしまって半分くらいしか残ってない！
でもどうして私がこの川を流れてるってわかったんですかあ～！！！黒死牟さん大好き～！！！あとでいくらでも気持ちよくしてあげる～！！！』

私はずぶ濡れの寒天状態のまま、びしょびしょと泣きながら、一体化しないようにだけ気をつけて黒死牟さんに抱きついた。
野外で潜ってしまうとあのお方に怒られる。

「まず黙れ…。ドブ川を泳いだ体で…まとわりつくな…。
あのお方が…大慌てで…この川を下れとしつこく言うから…来てみれば…。
この愚図…。
そのまま流してやれば良かった…。」

「ふええ、無惨しゃま…。」

ああ見えて私のことがけっこう好きなのかな、あのお方。
はー顔が可愛くて得した。

すっかりぽわんぽわんのゼリー状になってしまった私を、黒死牟さんは小さくまとめて風呂敷に包む。
そしてそのまま、私は黒死牟さんに背負われてちゃぷちゃぷと屋敷に戻っていったのだった。

いやはや、散々な夜であった。