［完］黒死牟邸に居候してます (ページ27)

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兄妹 ② ページ27

「誰！？お兄ちゃん！なにこの小汚いの！！！
土まみれだしなんか臭い！！！
今すぐ捨ててきて！！！」

だが、永住計画は早々についえた。
今私は、めちゃめちゃ高飛車な鬼にキセルを投げつけられながら、遠い目をしている。
なぜこの兄にこの妹が……？
甘やかしすぎて増長させているのでは……？

「まあまあ。堕姫、そう乱暴にするんじゃあねえ。
金平糖でも食いなああ。」

「いらないわよ！だいたいそれはアタシが客にもらった金平糖でしょ！」

なお、私が二撃目を避けたがために、辛気臭い兄に茶碗がブチ当たっている。
ひえ～、私はなんだかウケてしまった。

「何笑ってんのよ！！！」

＊＊＊

兄のほうがなだめすかしてくれたおかげで、私は陽のあたらない北向きの部屋で、妹のほうと一日過ごすことになった。
妹のほうは花魁で、この郭では女王のようにふるまっているらしかった。
妹のほうも、金平糖をたくさんくれた。

「こんなものが好きなの？貧乏くさいわねえ。」

『まあまあの値段するよ。金平糖は。』

私はぽりぽりかじりながら言う。
堕姫は私の言葉を無視してしゃべり続ける。

「あーあ、最近あのお方にお会いしていないから張り合いがないわ。
A草みたいな雑魚鬼は、あのお方に会うことなんてないんでしょうけど、私みたいな上弦の鬼になるとたまにお顔を出してくださるのよ。」

『きのう会ったよ。毎月血をくれるからね。』

「はあ！？なんでよ！？」

『シーッ。人が来ちゃう。
それにしても、あんたとこ全然客こないね。
花魁なのに不人気なの？』

私は、さっきおもてのほうからうっすら聞こえてきた花魁道中の騒ぎを思い出しながら言う。
どこかの郭の花魁がしゃらんしゃらんと歩いていく音が耳によみがえる。
きれいな音だったな。
出し惜しみしてんのよ！！！と堕姫は私の頭にげんこつを落とした。
乱暴な鬼だ。

＊＊＊

日が暮れて、私は堕姫にさよならをして吉原を出る。

「なあんだ、アンタ、上弦の壱の飼い猫か。」

堕姫がつまらなさそうに言う。

「道理でなんだかよくわからない気配をさせてるわけよ。」

上弦の壱の屋敷ならなんとなく場所が分かるから、と兄のほうが言うので、連れていってもらうのだ。
見上げたら、北の部屋から堕姫がひらひらと手を振っていた。

『はあ、兄妹いいなあ。』

私の独り言を聞いて、上弦の陸は少しだけ嬉しそうにした。