［完］黒死牟邸に居候してます (ページ18)

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罰と雑草 ② ページ18

ーーー逃げなければ！

俺は、恥も外聞もかなぐり捨て(こんな雑魚鬼から"逃げる"などとは！)、
ばっ、と外を確認する。
まさかの昼間だ。
外には逃げられない。

嘘泣きをしていた雑草鬼が、おや、と自分の手が透け始めていることに気づいて、こちらを見た。

『あのう……
差し支えなければなんですが、』

「差し支えあるに決まっているだろう！
やめろ！寄るな雑草！」

『雑草……、それが人にものを頼む態度でしょうか。』

「うっ、……頼む、A草殿、」

『うーん、でも……、猗窩座さん、けっこう好きでしょう？
これ。』

懇願空しく、A草はそのクラゲのように輪郭のぼやけた体で、正面から俺を抱きすくめた。
視界がぼやぼやと滲み、分厚い水の壁に阻まれたようになる。
粘度の高い水のなかで溺れているような感覚だ。
もがくと苦しくなりますよ、頭なんだか腹なんだかわからない辺りから、A草の声がする。
俺はあきらめて、体を投げ出して倒れた。

この感覚を、人間として生きていたころにもし味わっていたら、その場で絶命していたと思う。
そのくらい、圧倒的で屈辱的で、窒息するほど絶え間ない拷問的な快感だ。
A草が俺の中で気持ちよさそうに泳ぐたび、俺はうなり声にも近い声で呻き、背中を丸めて転がりまわる。

そして、自分の体が二つに分かれるような感覚ののち、ぺろんとA草がまろび出た。

『……猗窩座さんったら、そんなによだれまみれにして。』

にやにやと笑っている。
俺は怒る気力もなく、そのまま後ろに倒れ、大の字で横たわった。
そしてそのまま、夜が来るまで、小さくなったり大きくなったりして道場を駆け回るA草を涙目で眺めて過ごした。
そいつは、ふわふわと宙に浮きさえした。

『お絵かきとかしてもいいですか？』

俺はありとあらゆる問いや言葉を無視する。
そして日が落ちた瞬間、俺は道場の扉からそいつを蹴り出し、ものすごくしっかりと鍵をかけたのだった。