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6話 ページ6

普段は朝早くに帰宅する杏寿郎さんが、今日は珍しく、昼過ぎに帰宅した。
良かった、今日は血まみれでもなければ、怒ってもいない。
私は知らず知らずのうちにほっとする。

『お帰りなさいませ。昼食の用意はありますが、どうしますか。』

「手間をかけるな!頂こう!」

手に、くだんの文はない。
なるほど、疚しいものは懐中に仕舞って来る程度の気遣いはあるのね。
私は、聞きたい気持ちを堪えながら配膳する。

「A殿、何もそこまで畏る必要はないぞ!」

沈黙に耐えかねたように、杏寿郎さんは言った。

『畏まっているわけではありません。
接し方をはかりかねているだけです。』

「なんと!それは申し訳ない!それにしてもうまいな!これは!」

杏寿郎さんは、ずいぶん機嫌がよかった。昨日と同じ卵焼きを、うまい!と言いながら食べている。
私は、先ほど届いた文がずっと、かさかさと頭にひっかかって、苛々していた。

『……お怪我はありませんか。』

気を紛らわすように私は問うた。怪我などないことは、よく知っていた。
隊服にも羽織にも、あのべっとりとついていた血は、すべて返り血か、だれか別の人の血だった。
傷ひとつなかったから、杏寿郎さんの体にはなんら刃は届いていない。

「む、怪我とは?」

『昨日、ずいぶんと荒れたご様子でしたから。』

杏寿郎さんは、おお!と得心した様子で快活に笑う。嘘っぽい顔だな、と思った。

「俺はなんともないぞ!
昨日は洗濯の手間をかけてしまいすまなかった!」

そして、味噌汁をずーっと飲み干し、ようやく本題とばかりに、言った。妙に饒舌なのは、私に話さなければならないことがあるからなんだろう。

「明日からしばらくの間、煉獄の家に戻らなければならなくなった!
鬼殺隊の件だ!
申し訳ないが、一人にさせてしまうのも忍びない!
A殿も実家に戻られたらいかがか!」

私が杏寿郎さんほどの怪力なら、箸を折っていた。
ただ私は怪力ではないので、カタンと箸を置き、

『左様ですか。
実家に戻ると言っても父母に説明するのも面倒です。
私はこちらに残りますから、何かあったら文を飛ばしてくださいませ。』

『……カラスに文を持たせるんでしょう、鬼狩りの皆さんは。』

杏寿郎さんの眉がまた、一瞬だけ動いたのを私は見逃さなかった。

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やも - 冨岡夢の作品を読んでこちらも拝見させてもらいました。やっぱり文章が綺麗に洗練されていてとても好きです!素敵な作品ありがとうございました。 (2020年5月7日 14時) (レス) id: be623916d5 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - Rさんさん» コメントありがとうございます〜!変な文章どころかありがたい文章です…今のところ続きは書いてなうのですが、書くことがあればこの小説にリンクでも貼ろうかなと思ってます! (2020年4月15日 21時) (レス) id: 218c4f48c9 (このIDを非表示/違反報告)
Rさん - 完結おめでとうございます!コメントするの初めてなのですが変な文章になってないでしょうか?とても感動しました!続きなどあれば是非教えて下さい!素敵な時間ありがとうございました (2020年4月15日 14時) (レス) id: f96fb724ca (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - 炎さん» 一気読みできるテンポを狙って書いていたので、コメントうれしいです、励みになります!読んでいただいてありがとうございました! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - ss好きの923chanさん» ありがとうございますー!読んでいただけて嬉しいです。また思いつけば短編でも書こうかなとは思ってます! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年3月27日 23時

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