25話 ページ25
遅い朝食をとり、家事を片付けている私の横で杏寿郎さんは隊服に袖を通す。
隊律で、如何なる時も隊服を着ていなければならないのだそう。
昨日しっかりと皺を伸ばして整えておいた羽織を重ねると、それはもううっとりしてしまうほど精悍だった。
……うっとり?
はて、と私は頰に手を当てて考える。
……私、いままで杏寿郎さんを、うっとり、なんて思いながら見ていたかしら……。
半歩ほど前を歩く杏寿郎さんの顔を盗み見ると、その視線を感じたのか、ぱちりと目が合う。
どうした、と言いたげに目尻を下げる彼に、私は思わず赤面して下を向いた。
なんというか、久しぶりに外で杏寿郎さんを見たからか、調子が狂う。
歩いている間、杏寿郎さんは先の上弦との交戦についてや、蝶屋敷でどんなことがあったかなど、家にいなかったときの話を事細かに話してくれた。
戦闘の話は正直、恐ろしくはあったが、罪のないものを鬼から守りたいという、杏寿郎さんの強い正義感を改めて感じ、
私も「怖い」などと思っていてはならないと奮い立たせる。
……横に杏寿郎さんがいてこそ、そんな強い気持ちでいられるのだということは、わかっていたけれど。
『鍛錬ですねえ。』
私も。
「む!なんと、A殿にまで鍛錬不足を指摘されてしまうとは!よもや、よもやだ!」
『次は、怪我ひとつしないで、頸を落としてきてくださいね。』
私は、あえて意地悪な顔をして言った。杏寿郎さんも笑っている。
707人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
やも - 冨岡夢の作品を読んでこちらも拝見させてもらいました。やっぱり文章が綺麗に洗練されていてとても好きです!素敵な作品ありがとうございました。 (2020年5月7日 14時) (レス) id: be623916d5 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - Rさんさん» コメントありがとうございます〜!変な文章どころかありがたい文章です…今のところ続きは書いてなうのですが、書くことがあればこの小説にリンクでも貼ろうかなと思ってます! (2020年4月15日 21時) (レス) id: 218c4f48c9 (このIDを非表示/違反報告)
Rさん - 完結おめでとうございます!コメントするの初めてなのですが変な文章になってないでしょうか?とても感動しました!続きなどあれば是非教えて下さい!素敵な時間ありがとうございました (2020年4月15日 14時) (レス) id: f96fb724ca (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - 炎さん» 一気読みできるテンポを狙って書いていたので、コメントうれしいです、励みになります!読んでいただいてありがとうございました! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - ss好きの923chanさん» ありがとうございますー!読んでいただけて嬉しいです。また思いつけば短編でも書こうかなとは思ってます! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:イトカワ | 作成日時:2020年3月27日 23時