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12話 ページ12

私は、黙って聞いている。杏寿郎さんの大きな目に、その誠実な目に怒りや悲しみが去来する。

「……弟は、剣技の才がない。」

間をあけて、杏寿郎さんは言った。

「父上は焦っておられるのだ。
炎の呼吸を継ぐものが、俺のあとにいないことに。
だからA殿に後継ぎを求めるようなことを言い、甘露寺ーーー継子も取らせた。
明日、俺が死んでも炎の呼吸が途切れないように……。」

私は思わず、膝の上でぎゅっと握られている杏寿郎さんの手に手のひらを重ねた。
がさがさとして、分厚く、およそ想像もつかないほど酷使された手だ。

「A殿?」

『そんな、悲しいことを、そんなお顔をなさらないで。』

『煉獄のお母様から、文をいただきました。
あなたのことを心配されていました。
あなたが、自分の人生を諦めてしまっているのではないかと。
母としては、あなたに人としての幸せもちゃんと知ってほしいと。
……煉獄のお父様がそうであるように。』

「母上が?」

『私たち、まだ出会ってほんの少ししか経っていないし、
ほんの少ししかお話もしていないわ。
私、あなたが人としての幸せをちゃんと見つけるまで、お手伝いする。
あなたの人生は、鬼を狩るためだけのものじゃないし、
炎の呼吸を継承するためだけのものじゃないわ。
だって、いつかすべての鬼を斃すのでしょ?
そのあとも、あなたの人生は続くもの。』

『今日を初めましてにして、私たち、始めてみませんか?
こんなおままごとやめて、人と人として。
結婚するとか、しないとか、そんなのあとで決めればいいわ。
杏寿郎さん。』

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やも - 冨岡夢の作品を読んでこちらも拝見させてもらいました。やっぱり文章が綺麗に洗練されていてとても好きです!素敵な作品ありがとうございました。 (2020年5月7日 14時) (レス) id: be623916d5 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - Rさんさん» コメントありがとうございます〜!変な文章どころかありがたい文章です…今のところ続きは書いてなうのですが、書くことがあればこの小説にリンクでも貼ろうかなと思ってます! (2020年4月15日 21時) (レス) id: 218c4f48c9 (このIDを非表示/違反報告)
Rさん - 完結おめでとうございます!コメントするの初めてなのですが変な文章になってないでしょうか?とても感動しました!続きなどあれば是非教えて下さい!素敵な時間ありがとうございました (2020年4月15日 14時) (レス) id: f96fb724ca (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - 炎さん» 一気読みできるテンポを狙って書いていたので、コメントうれしいです、励みになります!読んでいただいてありがとうございました! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - ss好きの923chanさん» ありがとうございますー!読んでいただけて嬉しいです。また思いつけば短編でも書こうかなとは思ってます! (2020年3月30日 15時) (レス) id: f96b77b227 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年3月27日 23時

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