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拒絶する選択肢はなかった。不思議と、私はそれをやらねばならないことだと信じていた。強いられているのとは違う、脅されているのとも違う。そうしなければならないし、そうするべきだし、そうする以外に何もない。

口内には、狼のそれのような大きな牙が揃っていた。
私はひと呼吸おいて、男の首筋に噛みつこうと口を大きく開けた。
だが、私の真新しい牙は、男の柔らかな首の皮膚に届きはしなかった。

喉に焼けるような痛みが走った。

「あ…」

一閃、息も絶え絶えの男が死力をもって私の首を横一文字に薙いだ。
私を睨む瞳には、沸騰する血が滲んで見えた。焼き尽くすような視線が、私を貫いて、私はそのままぐらりと傾く。

げぼっ、と、空気と血の混ざった音が、口腔と喉の裂け目の両方から鳴る。

だが、切先は薄く肉を裂くにとどまり、私は焼けるような痛みに悲鳴をあげる余裕すらあった。なぜか?

「愚かな」

いつのまにか私の背後に立っていた鬼舞辻無惨が、一閃の刹那、私の髪を掴んで後ろに引いたからだ。ボタボタ、と私の首から血が迸って、羽織の男の顔に吹きかかる。
ひと呼吸置いて、「駄目か、」そうつぶやくと、ドシャッ、と羽織の男が崩折れ、そこにはもう音はなかった。かすかな拍動の音さえ。

「のろまに近づく馬鹿がどこにいる」
「その刀で首を落とされれば、鬼でも死ぬぞ」

呆然とする私に、鬼舞辻無惨は淡々と言った。

鬼でも死ぬ。
喉元に触れると、傷はすでに塞がっている。
こんな体でも、死ぬのかと思うと急に恐ろしくなって、

「…死にたくない…もう痛いのは嫌」

とつぶやいた。

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せいた(プロフ) - とても面白かったです!話せるようになった主人公が開き直る感じがすきですw続きが気になるますが完結どの事で残念ですが、お疲れ様でした! (2022年10月22日 2時) (レス) @page40 id: 4527c8b3f3 (このIDを非表示/違反報告)
イトカワ(プロフ) - みおさん» 嬉しいです〜読んでくださりありがとうございます!いつも終わりどころって迷いますよね… (2022年8月28日 0時) (レス) id: 02e548a085 (このIDを非表示/違反報告)
みお(プロフ) - お、終わりなんですか…?!この作品ほんとに大好きです!!まだ終わる予定は無いのでしたら(?)主様なりのペースで更新頑張ってください!!応援してます!! (2022年8月28日 0時) (レス) @page39 id: 98c132f21e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:イトカワ | 作成日時:2022年8月18日 2時

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