その後のこと -2 ページ6
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不死川に礼を言う機会は、ほどなく訪れた。
「義勇さん、お客様ですよ〜」
呼びかけるAさんの後ろでカチンと固まっている同僚に、噴き出しそうになる。
「冨岡、お前、」
「なんだ」
「この人は？」
「妻のAだ」
「妻ァ！？」
殆ど白目をむくように、不死川は絶句した。
座敷にチョンと座ってAさんの出したお茶を三口飲んで、ようやく再び口を開いた。
「その…なんだ、見合いかァ？」
「いや、たまたまだ」
「…あァ。もしや前の稀血がどうこうっていうのは、彼女のことか」
「ああ…その節は、助かった。礼を言う」
「クソが。てめェの女なら護符なんざ要らねえじゃねえか」
横でくすくす笑っていたAさんが、では私は少し外しますので、と座敷を出ていく。不死川はその小さな背中を、見たことがないくらい優しい目で見る。そして、ふいと俺の目を正面から射貫いた。
「彼女は、お前の…鬼殺隊のことを知ってんのか」
「かつて人間だった鬼を殺していることか？」
「それもあるが、…明日、惨たらしく死ぬかもわからない仕事だということを」
俺は少し考える。「知っている、と思う」
「思うが、どうだろうな。本当のところは分からん」
不死川は黙っている。だから続ける。
「だが、いつ、惨たらしく死ぬか分からないのは、誰もが同じだ。鬼がこの世にいればなおさら」
お互いの脳裡に、今は亡き人たちの去来するのが言葉もなしに伝わった。
「いつ死ぬかわからないから、大切であるが故に関わるのはやめようと思っていたが、彼女を知れば知るほど、そうも言っていられなくなった。知らないところで生きて死なれるほうが、困る」
まだ黙っているので、続ける。
「彼女や、もしかしたら生まれる子どものためにも、鬼のいない世にしなければならないという思いは、強くなったが」
長いこと黙っていた不死川は、一言、お前が腑抜けてなくてよかった、とだけ呟いて、ゆったりと立ち上がった。護符の代えをと思ったが、不要なようだから帰る。そう言って、いつかと同じようにその物騒な短羽織を揺らしながら屋敷をあとにしていく。
風に紛れて消えていく姿を眺めながら、俺はふいに思った。
俺がAさんに会って誰かを大切にする方法を思い出したみたいに、あいつにも、いつかその身を沈める絶望から救われる日が訪れるといい。
鬼がいなくなった後にも、人生は続くということを、あいつが喜んで受け入れる日が。
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Ｒ−アル−(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ (2020年10月24日 12時) (
レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
やも - 更新待ってました！続き楽しみです！ (2020年8月3日 3時) (レス) id: f6237b150c (このIDを非表示/違反報告)
瑞姫(プロフ) - 黒死牟邸から来ました(語弊)面白すぎて一気読みしてしまいました、、、大好きです！ (2020年6月25日 0時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
やも - 続編嬉しいです！終わらないでほしい… (2020年6月12日 3時) (レス) id: ae8b2f43ae (このIDを非表示/違反報告)
きゅー(プロフ) - ぎゃん、、夜更かししててよかったです。私もこの作品がほんとに大好きです！！イトカワさんありがとうございます。 (2020年6月12日 2時) (レス) id: edb3b79442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：イトカワ | 作成日時：2020年6月12日 2時
