その後のこと -1 ページ5
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「まあ、終わりよければなんとやらって言うだろ」
ゲラゲラと笑いながら宇随は言った。
Aさんを屋敷へ迎えた翌日、すぐに御館様のところへ行って、結婚をしたいこと、その相手が煉獄の家に住み込みで働いているから、引き取りたいこと、その分の代わりの家政婦を手配してほしいことなどを告げると、御館様も珍しくほんの少し驚いたような顔をして、しばし固まった。なぜか、すべての事情を知っているらしいあまね様が概要を耳打ちする。花柱殿から伺いました、と言い添えるあまね様を見て、今度は俺が固まる番だった。女性同士の連絡網とは、かくも。
「義勇、おめでとう。前を向いて生きるのを諦めないでいてくれて、うれしいよ」
すべて合点された様子の御館様は、そう言って微笑んだ。
しばらくしたら代わりの人に行ってもらうから、杏寿郎に伝えてもらえるかい、と言われ、俺は御館様のお屋敷から直接、炎柱邸に向かう。
その道中に、まさか宇随と行き会うとは。
宇随もまた、ヒマ潰しに煉獄の家へ行くのだと言った。
「お前、ド派手に勘違いしてたもんなァ。謝れよ!」
「それについては、俺はお前が悪いと思う」
「それで、Aさんとはどうなった。お前の屋敷付きになるんだろ?」
「いや、妻になる」
「は!?展開が早くねえ!?」
***
「…というわけで、Aさんはうちで引き取ることになった」
煉獄もまた、似たような反応を返したが、彼には祝いの言葉を添えるだけの常識はあったようだ。
「それはめでたい!
ちなみに、もし勘違いをされていたら心外なのだが、俺はAさんに指一本、触れていないぞ」
「…知ってる。すまなかった」
「知ってる、って面白えな!まるで破瓜の血でも見たような口調じゃねえか」
やりとりを聞いている宇随が、からかうように口をはさむ。
そして俺がなんと応えるべきか逡巡している妙な間を察して、急に真顔に変わった。
「…え、冗談だろ?昨日の今日でか?」
「宇随、どういう意味だ?俺にもわかるように説明してくれ!」
「箱入りの煉獄にはまだ早い話だ」
それでなんとなく察したらしい煉獄が、まるで少女のように顔を赤らめたのが可笑しい。
「派手に祝いの宴だなァ、こりゃ」
「うむ、不死川にも知らせよう」
「やめてくれ」
そうだ、不死川には、お礼を言わなければならない。気にかけてくれていたし、彼の言葉で気づけたこともあるのだ。気にくわないが、それとこれとはべつだ。
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R−アル−(プロフ) - 完結おめでとうございます!! (2020年10月24日 12時) (レス) id: 8b5171215e (このIDを非表示/違反報告)
やも - 更新待ってました!続き楽しみです! (2020年8月3日 3時) (レス) id: f6237b150c (このIDを非表示/違反報告)
瑞姫(プロフ) - 黒死牟邸から来ました(語弊)面白すぎて一気読みしてしまいました、、、大好きです! (2020年6月25日 0時) (レス) id: 445b4986a2 (このIDを非表示/違反報告)
やも - 続編嬉しいです!終わらないでほしい… (2020年6月12日 3時) (レス) id: ae8b2f43ae (このIDを非表示/違反報告)
きゅー(プロフ) - ぎゃん、、夜更かししててよかったです。私もこの作品がほんとに大好きです!!イトカワさんありがとうございます。 (2020年6月12日 2時) (レス) id: edb3b79442 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:イトカワ | 作成日時:2020年6月12日 2時