検索窓
今日:6 hit、昨日:1 hit、合計:12,529 hit

いまとなれば ページ4





『っ…まって、ってば』


先を歩くふたつの背中に向かって叫ぶけどちっとも止まってくれない

短い学ランの背中が振り向いて笑う



「はーやーくー!授業遅れるって七海がぁー」


『もーつかれた…死ぬ』



さっきまでグラウンドを走ってたって言うのになんでそんなに早歩きなんだよあいつら

か弱い女子なめんな

入学して1か月も経たない5月の半ば

体力馬鹿の同期ふたりには全くもってついていけない



『はぁ、やってらんないわ』



そうひとり呟いて石畳にしゃがみ込む

石の表面の少し低い温度が心地よくてもういいやって体を投げ出す

空の水色にふわふわした雲の白色が混じっている



『うわっ!』



急に目の前に現れた誰かに驚いて、ばっと体を起こす

私の顔を不思議そうにのぞき込むサングラス

前見えてんのかこれ



「さっそくさぼりー?新入生ちゃん」


『…先輩、ですか?』



とっさに立ち上がれば、ずいぶんと高い目線に驚く

背、でかっ

軽く30cm以上差がありそう

白くてきれいな髪がさらさらと風になびいて、光を吸い込んでかがやく

空の青がきれいな髪に透けて溶けていく



「2年、五条悟だよ〜ん」


『山門Aです』



両手をひらひらさせながらへらへらと笑っている美少年、改め五条悟

そーいや硝子さんが残りの同期は出張中とかなんとか言ってたななんて思いだす



「で、あちらが同期の夏油傑くんで〜す」



五条さんがそう言いながら後ろをてのひらで指し示す

五条さんのスタイルと顔面に気をとられてもう一人一緒に居ることに気が付かなった



「あー、どうも。夏油です」



彼のニヒルな笑みをじーっ見つめながら、あほ面でどうにかどうも、とだけ返した


衝撃的だった


今までの人生15年と7か月と8日生きてきて一番衝撃的な出会いだった

切れ長の三白眼も揺れる邪魔そうな前髪も、時代錯誤な形の制服も普通絶対に選ばないであろうピアスも、その何もかもが魅力的だった

'ニヒルな笑み'なんて言葉一生使う機会はないと思っていたけれど、彼のその口角は上がっているものの冷たさを含んだ笑顔はなによりもニヒルな笑みそのものであった


大人になった今思い返せば、それは若さゆえの年長者への憧れであったり自分にはない何かへの敬慕だったのかもしれない


それでもそれは紛れもなく、私の人生で初めての≪ひとめぼれ≫だった

ニンニクせんべい→←ぬるま湯



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
137人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 夏油傑 , 七海建人
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ビタミンとっき | 作成日時:2023年10月5日 2時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。