非常な日常 ページ1
.
眠たい目を擦ってようやく体を起こす
ぼーっとしたまま部屋を出ると、心地よい風がさーっと長い黒髪を揺らす
数日間振りっぱなしだった雨が今朝あがったようだ
木の匂いに混じってわずかに雨の匂いがする
『んーーーー』
大きく伸びをしながら一歩踏み出せば、築何年とも知らない木造の廊下がみしみしと音を立てた
「おはようございます」
不意に背後から声をかけられ、びくっとしてしまった
聞きなれた声に振り向くまでもなく適当に返事をする
『あーおはよ』
「寝起きの所悪いですけど、任務です」
『えーそれ私じゃなきゃダメ?』
ぼさぼさの髪を手で梳かしながら目を細める
まあこの男に何言っても無駄なんだろうけど、せっかく気持ちのいい朝だったのに…
「そんな顔しても、暇な術師はアナタくらいです」
相変わらず感情の起伏のなさそうな顔でそう言う男
綺麗な金色の髪もスーツもきちんと整っていて、朝とは思えない
『じゃあ七海が行けばいいじゃん』
「私は他の任務があります。いつだって人手不足なんですからね。だいたいもう10時過ぎてますし、どうせ起きてないと思ったからこうやって…」
『あああーはいはい分かりましたあ、行けばいいんでしょ行けば』
これ以上反論したら三倍くらいになって返ってくる未来が見えるのでいい加減負けを認める
散歩でもしようと思ってたのに、回れ右して部屋に戻る羽目になってしまった
だらだらと準備をしていたらスマホが音を立てる
立て続けに入ったメッセージに慌てて壁に立てかけてあった薙刀を肩にかけ走って部屋をとびだす
見慣れた木造の平屋を駆け抜けると、和風の仰々しい建物が正面に現れる
窓枠をまたいで中庭に飛び出し、またまた全力疾走
『あっ、ごめんなさいっ』
勢いよく石段を駆けおりる途中誰かにぶつかりそうになって慌てて身をひるがえす
大方ここの職員だろうその人はすごい顔して転びそうになっている
心の中で土下座しながら正門の前に行くと、黒い乗用車が停まっている
その前で例の男がイライラを隠そうともせず仁王立ちしていた
「っとに呆れる」
『ごめんなさい…』
運転手も人手不足のようで、行先は違えど私とこいつは同じ車でそれぞれの現地に向かう手筈だったらしい
結局目的地に着くまで不機嫌だった彼と気まずそうな補助監督さんと私で最悪な空間だったことは言うまでもないけれど
137人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ビタミンとっき | 作成日時:2023年10月5日 2時