おんぼろアパート中庭相談室

似てるようで似てなくてそれでもってそっくり ページ33

TH「見える？あそこが僕らのアパートだよ」


『わ、影薄っ。そしてぼろい』



周りの建物と比べて明らかに色あせているアパート

まだここに引っ越して数か月なのに不思議と愛着が湧く

隣で指さしているテヒョンさんも同じ気持ちなんだろうか



TH「ここにいる間は全部忘れていいんだって」


『全部…？』


TH「うん。課題のことも、嫌な奴のことも」


『へえ…』


TH「辛さも、責任も、不安も。何もかも全部」


『テヒョンさん…』



だから時々ここに来るんだって、テヒョンさんは笑う

もうさっきほど美しくは見えなかった



『テヒョンさんも普通ですね』


TH「普通？」


『はい、普通の大学生みたいです』



ははっ、ははは

突然笑い始めるテヒョンさん



TH「ジミナとおんなじこと言ってる」


『え、ジミンと？』


TH「うん、この場所はジミンから教えてもらったの。その時言ってた。テヒョンも普通の人だねって」


『そうだったんですね』


TH「だから僕も言ったの。ジミンも普通だねって」



その日から二人は仲良くなったんだって楽しそうに話すテヒョンさん

そういえば二人って喧嘩してなかった？


芸能界で突如人気急上昇したテヒョンさん

大きな家で生まれ育ったジミン


きっと周りから普通に接されることが少なかったのかもしれない


それでもお互いはお互いにとって普通だったんだな




『なんかドラマみたいですね』


TH「でしょ？てことで敬語とさん付け禁止ね」


『は？』



この展開デジャヴ？

テヒョンさんとジミンさんって正反対なのにそっくり…



『それとこれとどんな関係が…』


TH「いひひ、Aとは仲良くなれそうな気がする」


『言っとくけど、私二人より年上なんだけど！』


TH「じゃあヌナって呼ぼうか？」


『…っそれはちょっと心臓に悪いからだめ』


TH「ふーん」



なんか丸め込まれてしまったけど関係ない話しかしてないや

テヒョンさんってそういう才能があるのだろうか

ある意味口車に乗せられてるというか…




TH「僕さ、俳優やめるかもしれない」



そして急にまたそういうこと言いだすんだもん



『へ？』


TH「今まで成り行きでこうなっちゃたけど、別に俳優になりたかったわけじゃないし」


『そーだったん、だ』


TH「たまたまモデルにスカウトされてバイト感覚だったのに、いつの間にかこんなことになって自分が一番びっくりしてる」


『…』


TH「追いつけないんだ。芸能人のキムテヒョンに」

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