恋だとか愛だとか【エース・トラッポラ】

第４話 ページ4

「話ってなんだよ」

放課後、真っ直ぐオンボロ寮に帰ろうとしたところをエースに呼び止められた。

教室には俺とエースが残って、デュース達は先に帰った。

背を向けるエースがやっとこちらに振り返るが、窓から差し込む光のせいでエースの顔がよく見えない。


「すげえ急だけど、やっぱりさ。伝えておきたいことがある」

口調からして真剣な話なんだと伝わる。今はちゃらけた返す場面ではないんだろう。


「前からAのことが好きなんだ」


耳を疑う発言にAは大きく目を見開く。

やっとはっきり見えたエースの顔は今まで見たことないくらい真剣な顔だった。少し恥じらいを纏うエースの顔はほんのり赤く染めた。それは夕日のせいだろうか。

なんて？と聞き返したいが、エースの冗談ではなさそうな顔つきに聞き返すことは出来ない。何度も脳内で再生するエースの言葉。

「…賭けてんの？デュースとグリムで悪巧み？」

咄嗟に出た言葉がそれだった。

「は？」

Aの言葉にエースは眉を顰める。


「おかしいだろ、俺を好きになる要素なんかないって。もういいだろ、ネタばらししたって。罰ゲームでやらされたんだろ」

「…お前、本気で言ってんのか？」


眉を八の字にする程度だったがみるみる荒々しい顔つきになって、まるで敵視するかのように鋭い目付きでこちらを見る。

「俺って人の心を騙す奴だとお前は思ってんの？」

感情に乗せて怒りを含ませる声。普段聞いたことない声がエースの口から発する。2人に空いた距離が一歩、一歩と近付いてくる。目の前に立つエースはAに視線を落とすが俯いているせいで彼の顔は見えない。

「…いや、そういうわけじゃ…」

「返事は後で聞くわ」

そう言うとエースは先に教室を出ていった。取り残されたAは立ち尽くしていた。


いつからエースは俺を好きなった？何故俺を好きになる？俺なんかよりもっといい人が近くにいるはずなのに、俺を好きになるところなんてあるのか？

個人的にエースと仲良いとは思っていた。話しやすいし、気が楽だった。むしろそれがダメだったのか。

「はぁ…」

勝手に仲がいいと思っていたが相手は違うようで、友人を失うことになりそうだな。

俺はエースをそういう風に見たことがない。咄嗟に考えさせてくれなんて言ったが、考えるも何もそういう対象として見てない。答えは最初から出ている。

これだから人付き合いは苦手なんだ。

第５話→←第３話

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す