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「めめ？」
双子って比べられがち。そういうの嫌だしムカつく。珍しがられるし。似てるとか似てないとか。うんざりするほどうるさい。学校は嫌い。俺とめめの邪魔ばかりしてくるから。どうしてなの、って小学校の頃思ったっけ。あいつの周りにいるやつが邪魔で、あいつの目に映るやつが邪魔で、あいつに群がる女が邪魔で。あいつを怒るやつが邪魔で。中学でも同じことの繰り返し。あいつはニコニコしながら隣で、「しょうたくんと双子でよかった」って言うけど、俺は思えなかった。双子だとこんなにうんざりして、双子とか、兄弟とか、家族って壁が邪魔をする。
「帰んないの？」
「うん、なんか手紙来てて」
「手紙？」
帰り支度が終わってカバンを持ってめめのクラスに向かいに行けば、来たの？というような顔で迎えに行くって言ったじゃんって。いいよ、お前どうせ周りに人が群がってこっち来れねえんだからって。
「そ、なんか…漢字読めなかったけど」
「見してみ？」
どうしてこんなにもバカなのか。お前俺と同じだろ、だから俺と同じで読める字と読めない字ほぼ一緒だろ。なのにどうしてお前はこんなにも馬鹿なの？それこそさっきの、『双子は比べられがち』じゃないけど、お前やばいよ。手紙を受け取って中を見てみれば、所謂告白するからあなた一人で来てくださいってやつだ。
「しょーたくん？」
「なに、」
「なんて書いてあった？」
何も知らねえみたいな顔。相手の気持ちも、俺のことも。透き通ったような綺麗な黒曜石みたいな目で見詰めてきて。お前には俺の気持ちも汚ねえ女の気持ちも知らなくていいし、知って欲しくない。これが弟に向けていい気持ちなのか、間違っていることにさえ気づきたくない。真っ直ぐ見つめてくる目から視線を外して、手紙を押し付けるみたいに返した。むしゃくしゃしてなにか言い出しそうな気がしたから、
「俺もわかんねえわ、とりあえず帰ろ」
「でも、」
「いいから、」
ぐ、と手を引いて帰路へ進む。律儀なやつだな、なんて無理やり引っ張りながら思って。お前くらいだったら俺の手なんか振り解けるはずなのにずっとされっぱで無言で着いてきて。いや、帰るとこは一緒だけど、突然不機嫌になられたらめんどくさいだろ。なのに何も怒らないなんて、お前心広すぎかよ。俺の心はこんなにも狭いのに。いい加減弟離れしろとか、しなきゃな、とか、一切考えられない。お前がいない未来なんていらないって思ってしまう俺はダメなのか。
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作者名：ぜろ. | 作成日時：2021年1月17日 23時
